妖狐の約束は月の光と共に 番外編

棚田勇人の父と母の出会いを描いた物語。

妖狐の約束は月の光と共に 番外編

白桜(しろざくら)

 

 それはある冬の出来事だった。その日は珍しく雪が降っていた。そんな中、傘代わりに学生鞄で頭を覆い、足早に家を目指す一人の女の子が居た・・・・・

 

「大変!早くしないと、バスが出ちゃう!!」

腕時計を確認すると、あと五分で出発する時刻になっていた。雪で滑り易くなっている歩道を、必死に走り始めた。

 

 数分後。バスが扉を閉め、バス停から出発する直前だった。彼女はバスに向かって、鞄を持っていない手を大きく振った。

「待ってくださーい!!」

精一杯大声で叫ぶと、バスはゆっくりと止まった。運転手が彼女に気付いたようだ。バスの扉が開き、急いでバスに乗り込んだ。バスに乗り込むと、コートに掛かっていた雪を軽くはらい、席に座った。

「ふ~。助かった~」

ホッと一安心すると、窓際から外を覗いた。一面が白い雪に覆われつつあった。彼女はその景色に感動していた。

(明日は友達と、雪遊びしたいなぁ~)

 

 バスは順調に進み、隣町に入った時だった。

「明日が楽しみだなぁ~」

バスは交差点を右に曲がった時だった。制限速度を超えた一台のバイクが、バスに突っ込んで来た。

キッ、キーイ!!バーン!!

バスはバイクと正面衝突し、バスはバイクを押しながら、歩道に突っ込んで行った。彼女はバイクの衝突の反動で、席から床に倒れ込み、頭を押さえていた。そのまま蹌踉(よろ)めきながら立ち上がり、窓から外を見た。

「大変!逃げてー!!」

バスは丁度歩道を歩いていた、青年に向かって突進していた。

 

『逃げてー!』

青年は誰かの声を聞き、後ろを振り返った。バスはもう目の前に来ていた。

「全くよ。親父の言うとおりになったじゃないか。夜光!」

「へい、へい。行くぜ!!」

 

 バスが青年にぶつかる直前だった。彼女は信じられない光景を目にした。青年の肩から一匹の狐が歩道に降り立ち、あっという間に巨大化した。四本の尾から四つの巨大な炎の玉が作られ、バスに目掛けて炎を飛ばした。炎はバスを包み込み、彼女は炎がぶつかった衝撃で、床に倒れ意識を失った。 

 

*   *   *

 

「・・・・ここは、何処だろう?」

意識が戻った彼女は、辺りを見渡した。何処を見ても、雪、雪、雪・・・・・まさに、白銀の世界が目の前に広がっていた。雪はまるで白い絨毯のようだ。ふかふかしていて、町に降っていた雪より真っ白だった。

「ここは・・・・・東北かな?」

飽くまで日本に居ると仮定して、考えた結果だった。兎に角行動する事にした彼女は、真っ白な雪に足を取られながらも、前に進んで行った。

 

 

 暫く雪道を歩いていると、一瞬だが何か音が聞こえた。耳を欹(そばだ)てながら辺りを見渡すと・・・・・

ガサガサ・・・・

「そこね!」

彼女は近くにあった茂みに手を入れ、音の正体であろう何かを掴んだ。掴んだまま勢い良く引っ張った。

「・・・・・どちら様?」

掴んでいた物の正体は、銀髪で銀の瞳を持ち、黒い笠を深く被っている、幼い子供だった。足をバタバタと動かす度に、その子が着ている蓑が激しく揺れた。

「わわわ!大丈夫、何もしないから」

子供は暫く抵抗をしていたが、観念したのか足を止めた。すると、

「おーい、雪(ゆき)!何処に居んだー!!」

何処からか男の子の声が辺りに響いた。

「雪?あなたが雪・・・・ちゃんでいいのかな?」

腕の中で大人しくなっている、子供に聞いた。その子はコクリと頷いた。雪を探している声の主は、彼女が見える所までやって来た。

「おーい、雪・・・・・・」

声の主は彼女を見て、ピタリとその場に立ち尽くした。燃えるような赤い髪、瞳の色も髪と同じ色を持った、男の子だった。沈黙に耐えきれなくなった彼女は、男の子に声を掛けた。

「あの~。雪ちゃんのお友達?」

男の子はハッと我に返り、すぐに身構えた。

「おまえは誰だ!雪を離せ!」

彼女は暫く考え、兎に角自己紹介をする事にした。

「えっと、私の名前は、佐久野(さくの)由美(ゆみ)です」

由美はペコリとお辞儀をした。頭を上げ腕の中にスッポリ収まっている雪を解放した。雪はチラリと由美を見て、男の子の方へ走って行った。

(雪ちゃんの走っている姿、かわいいなぁ~)

雪が男の子の側にやって来ると、男の子はホッと安心した表情になった。男の子は雪に言った。

「そういやー雪。おまえが初対面の奴と、一緒にいるなんて珍しいな」

雪はあっと言った表情になった。男の子は由美の方を向いた。

「お前は由美だったな。由美はここの妖怪ではなさそうだな。何処の妖怪なんだ?」

由美は呆気に取られた。

(今この子、何て言った?)

思考が止まっている由美に、男の子は由美に近づいた。由美は男の子が近づいている事に、全く気付いていなかった。

「おーい。大丈夫かー?」

由美は側で突然声を掛けられて、ビクッとなった。由美は恐る恐る男の子に聞いた。

「さっき私に、何処の妖怪て聞いたよね?」

男の子は然も当たり前な表情で言った。

「あぁ。言ったぜ」

由美は大きな溜め息をついた。

「私は何処にでも居る、普通の人間です」

今度は男の子が、由美の発言に呆気に取られた。

 

 

 何処までも続く雪の絨毯に足跡を付けながら、三人はある場所に向かっていた。男の子は雪をおんぶし、由美は男の子の後を追っていた。

「何処へ行くの?」

黙々と歩く男の子に、由美は言った。男の子は何も言わなかった。暫くすると、小さな広場に出て来た。そこには男の子と歳が近いと思われる、子供達が数名居た。男の子に気付いた子が、一人近づいて来た。

「火蔭(ひかげ)!何処まで行ってたんだ!」

近づいて来た子は、銀髪で毛先が赤く、右目が隠れていた。容姿的に女の子のようだ。

「おいおい、それはちょっと言い過ぎなんじゃねーか?」

今度は、銀髪にライトブルーの瞳を持った、女の子と同じくらいの歳の男の子がやって来た。

「ところで、後ろに居る人は誰?」

女の子は由美を見て言った。由美はどう答えれば良いか悩んでいると、雪を降ろした火蔭が言った。

「こいつは、佐久野由美。人間だ」

女の子は唖然とした。側に居た男の子は言った。

「なんで、人間がこの世界に居んだ?」

火蔭は広場の中央に居る、他の子達の方を向いて言った。

「それをあいつに聞こうと思って、ここに連れて来たんですよ」

火蔭は由美の服の袖を掴み、広場の方へ歩いて行った。

 

 

 広場に行くと由美の周りに、由美より小さい子供達が集まって来た。火蔭は言った。

「おいおい。おまえら、由美が困ってるぞ」

由美に集まって居た子供達は、由美から離れた。さっきの銀髪の男の子は言った。

「取り敢えず、自己紹介でもするか。俺の名前は釧濫(せんらん)。鯨一族だ」

「鯨って、あの海に泳いでいるあれ?」

「あぁ」

由美はへぇ~と言った。釧濫の隣に居た、毛先の赤い女の子が言った。どうやら、釧濫から順番にしていくようだ。

「俺の名は蓮蘭(れんらん)。蛟(みずち)一族だ」

次の子は、黒髪で前髪が長い為、目が隠れていた。片手には唐傘(からかさ)を持っていた。その子は、小さな声で言った。

「僕の名前は、天(てん)。雨降しです。宜しく」

由美は宜しくと言った。次の子は、天と同じく黒髪で、おかっぱで頭のてっぺんが撥(は)ねていた。黒目がクリッとしている。

「僕の名前は、柚汰(ゆた)!座敷童だよ!」

「えっ!?座敷童!?」

一族の幸福と富を与えるが、家に居なくなるとその一族は没落する、と由美は祖父から聞いていた。

「外に居て大丈夫なの?」

「うん!大丈夫だよ!」

笑顔で返された由美は、それ以上何も言えなくなった。次の子は、金髪の長髪で、瞳はライトグリーン。右の頬に模様が刻まれていた。頭には猫耳?なのかは分からないが、大きな耳があった。

「俺の名前は白陽(はくよう)。妖狐一族だ」

「妖狐って、狐の妖怪?」

「あぁ。そうだ」

(じゃぁ、頭の耳は狐耳か~)

最後は火蔭と雪が自己紹介をした。

「俺の名前は火蔭。赤しゃぐまだ。そんで、こっちが雪。雪ん子だ」

雪は由美にペコリとお辞儀をした。由美はちょっと緊張した顔で言った。

「えっと、私の名前は佐久野由美です。宜しくお願いします」

由美もペコリとお辞儀をした。

「よし!これで自己紹介は終わったな!」

火蔭は伸びをして、地面に屈んだ。雪を集め、小さな雪玉を作り、手に持った。由美は何をするのだろう?と不思議に思いながら、火蔭を見ていた。火蔭は由美に向かって、ニヤリと笑った。

「かったるい説明は後だ!由美!雪合戦に参加しろ!」

「へっ?なんで?」

由美は頭にハテナを一杯浮かべた。

「俺達は全員で七人だろ」

由美は火蔭に言われ、この場に居る火蔭達を数えた。確かに由美を抜くと七人だった。

「確かに七人だけど、強制参加との繋がりが分かんない!」

火蔭は大げさに溜め息をついた。

「だから、由美を入れたら八人だろ!」

由美は八という数字を聞いて、ハッと気が付いた。釧濫は言った。

「チームに別れろー!」

由美には拒否権がないようだ。由美は雪・火蔭・白陽のチームに入った。広場の端まで走って移動し、雪で作られた壁に隠れた。かなり本格的な雪合戦のようだ。それぞれのチームの陣地は広場にある大きな木を境にし、雪玉避けの壁を急いで作った。相手チームの持っている、雪ちゃんお手製の氷の玉を取ったチームの勝ちとなる。由美は投げるのが得意ではないので、雪玉作りの役になっていた。

「おい!雪玉の何個かに、中身を入れろ!」

火蔭は手に持っている雪玉を、猛スピードで投げながら言った。

「突然言われても!!」

由美と一緒に雪玉を作っていた雪は、小さな雪玉を作り息を吹き掛けた。すると、あっという間に氷の塊になった。雪はその氷を由美に渡した。

「雪ちゃん!これを入れるの!?」

雪はコクリと頷いた。当たれば怪我をするのは、目に見えていた。

「雪玉が無くなったぞ」

白陽は雪を軽く払いながら言った。由美は仕方なく氷入りの雪玉を、十個ほど作った。

「おっ!いい感じじゃねーか!」

火蔭は試しに氷入り雪玉を、一個相手の陣地に投げた。雪玉は相手チームの釧濫に、見事にクリティカルヒットした。釧濫は慌てて雪の壁に隠れた。

「大丈夫か!?」

蓮蘭は雪玉を地面に置き、釧濫に声を掛けた。

「いってー!この雪玉何か入ってんぞ」

中を割って見ると、キラリと光る氷の塊が入っていた。蓮蘭は言った。

「あぁー!氷入れるなんてずるい!!」

その様子を見ていた天は、作った雪玉に自身で雨を降らし、雪玉を濡らした。

「これを投げて。その雪玉より、堅くなるから」

蓮蘭は濡れて冷たくなった雪玉を受け取り、こちらも猛スピードで投げた。雪玉は飛んでいる間に急速に固まり、火蔭に当たる頃には氷の固まりになっていた。その雪玉は、見事火蔭にクリティカルヒットした。

「いって――――!!なんじゃこりゃ!!氷じゃねーか!」

火蔭は氷入りの雪玉を乱雑に取り、相手チームに投げ返した。

 

 

 暫くは両チーム共互角の戦いをしていたが、由美はある変化に気が付いた。

「雪ちゃん、氷がな・・・・・」

さっきまで一緒に雪玉を作っていた雪が、いつの間にか居なくなっていた。

「火蔭君!雪ちゃんが居ない!」

慌てている由美を尻目に、あつーい雪合戦を繰り広げていた。

「お!白陽!そろそろ準備だ!」

「あぁ。分かった」

火蔭は投げる雪玉の数を、気付かれないように減らしていった。白陽は器用に自分の尻尾も使って、大量に雪玉を作っていた。由美は訳が分からないと思いながら、堅い雪玉を作っていった。暫くすると、広場から少し離れた所から、何かが転がる音が聞こえて来た。由美は恐る恐る、後ろを振り返ると・・・・

「雪ちゃん!?」

由美の倍はある巨大な雪玉に、雪は玉乗りをしながら、進んで来た。

「おっ、来たか。白陽!由美!行くぞ!」

「へ?」

火蔭はそう言うと、雪ちゃんお手製の橇(そり)に、全ての雪玉を乗せた。

「白陽!頼んだ!」

火蔭の合図で、白陽は青白い火に包まれた。すると、人の姿をしていた白陽は、三本の尾を持った白狐(びゃっこ)に変わっていた。白陽は橇に付いている紐(ひも)を咥えた。

「由美!雪玉持ってねーと、危ねーぞ!」

由美はハッと我に返り、雪玉を持てるだけ持った。

「オラオラ!!名物雪玉、巨大バージョンだー!!」

雪はそのまま巨大雪玉を転がし、雪玉の後ろに火蔭・白陽・由美の三人は進んで行った。相手チームの柚汰はその光景に、顔が真っ青になった。

「どうした柚汰?」

蓮蘭は心配そうに、柚汰の顔を覗き込んだ。

「あれ・・・・」

柚汰が指を指した方向を見ると・・・・・

「なっ!?釧濫!天!早く逃げろ!!」

釧濫と天は首を傾げたが、蓮蘭と柚汰の只ならぬ様子に、逃げる準備をした。柚汰は言った。

「わわわ!逃げろ~!!」

四人は雪玉を持てるだけ持ち、雪の壁から移動した。

「なんじゃこりゃ!!」

「えっ!」

釧濫と天は呆気に取られた。火蔭はこのチャンスを見逃さなかった。

「今だ!投げろー!!」

白陽は橇を止め、尻尾で雪玉を投げた。釧濫達は広場の中央にある、巨大な大木の陰に隠れた。

「いてて!ちくしょー!あの巨大雪玉が、壁になってやがる!」

釧濫は雪玉を当てられた箇所を、押さえながら言った。雪が器用に動かしているため、巨大な動く壁になっていた。釧濫達の投げている雪玉は、この巨大雪玉に妨げられていた。

「あれ?天は?」

雪玉作りをしていた柚汰は、天が居ない事に気が付いた。蓮蘭は辺りを見渡したが、天の姿はなかった。

「てーん何処いったんだー!」

「うん?あれじゃねーか?」

釧濫は指を指した。蓮蘭と柚汰はその方向を見ると、唐傘を器用に操作しながら、上空を飛ぶ天が居た。天は雪の頭上に行くと、雨を降らした。雪は驚いて足を滑らし、雪玉から落ちてしまった。

「あっ!雪ちゃん!」

由美は素早く移動し、雪をキャッチした。天は一通り雨を降らすと、釧濫達の所に戻って来た。

「ナイス!天!」

「えへへ」

蓮蘭は天の肩を、バシバシ叩きながら言った。巨大雪玉はそのまま転がり、広場の奥にある木に激突し、轟音と共に粉々になった。釧濫は嬉しそうに言った。

「形勢逆転だ!火蔭!覚悟しろ!!」

火蔭はチッと苦い表情になった。火蔭達は兎に角安全な場所に、避難し始めた。由美は雪を橇に乗せ、白陽が走り出した瞬間、

ツル!!

天が雨を降らした一帯が氷付き、白陽は橇の紐を咥えたまま滑って行った。

「白陽君!雪ちゃん!」

「おい!由美そっちは危ね・・・・」

火蔭は由美を連れ戻そうとしたが、氷で足を滑らせ、由美を巻き込み、そのまま白陽達と同じ方向へ滑って行った。一方釧濫達は逃げる火蔭達を、追い込もうと大木から、移動しようとした時だった。

みんな――!!逃げろ――!!

火蔭の叫び声が聞こえ、釧濫達が振り返った瞬間。火蔭達は釧濫達を巻き込み、そのまま大木に激突した。

ドーン!!

激突した衝撃で、大木の葉に積もっていた大量の雪が、一気に落ちて来た。

ザ―――――!!

ぎゃあああぁぁぁ・・・・・

全員悲鳴と共に、雪に埋もれてしまった。

 

 それから数分後。先に釧濫が雪から脱出した。

「ぷはー。危なっ!」

次に出て来たのは、由美だった。由美はなんとか自力で脱出し、服に付いた雪を払った。すると、

「あれ?なんだろうこれ?」

由美の側に光り輝く、透き通った玉が転がっていた。由美は拾い上げ、眺めていると、

「ぺっ、ぺっ!あぁ~疲れたぜ!」

火蔭は火を操り、雪を溶かして脱出した。火蔭は由美の持っている物に気が付いた。

「おい由美!それ貸せ!」

「えっ?」

火蔭は由美から玉を取り、釧濫に言った。

「釧濫さん!俺達の勝ちだ!」

「なっ!」

由美が持っていた玉は、釧濫チームの氷の玉だった。

 

こうして雪合戦は、火蔭チームが勝利した。

 

 

 雪合戦を終えたメンバーは、吹雪いてきたので、雪の住む村へ移動した。その村は雪化粧をした山々に囲まれ、村の中には川が流れていた。現在は冬真っ盛りなため、川は氷に覆われていた。

「おっ、じゃましまーす!」

雪を背負った火蔭が、雪の家の中に入った。その後に続いて、他のメンバーも入って行った。

「さてと、由美。これからどーすんだ?」

茶の間に集まり、温かいお茶を飲みながら火蔭は言った。

「あっ・・・・・」

雪合戦に夢中になっていた由美は、今更ながら自分の立場に気が付いた。

「別にここに泊まれば、いいんじゃねーか?」

釧濫はボリボリと煎餅(せんべい)を食べながら言った。

「それは、雪のお母さん次第でしょ!」

蓮蘭は近くの火鉢に、手を暖めながら言った。

「でも、まずは雪の意見を聞くべきだよ」

天は唐傘を乾かしながら言った。

「雪はもちろん賛成だよね!!」

柚汰は懐に入れていた、剣玉をしながら言った。雪はコクリと頷き、由美の膝の上に座った。

「えっ!?いいの!雪ちゃん!」

「そうと決まれば、おばさんに了承を得ないとな」

白陽は自分の荷物から取り出した本を閉じ、台所へ向かって行った。

「よし!行くぞー!」

由美を引き連れ、全員台所へ向かった。

 

 

 台所に着くと、雪の母親が夕食作りをしていた。

「いいにお~い」

由美は匂いを嗅いだ。なんとも美味しそうな香が、台所に漂っていた。その声に気が付いた雪の母親は、後ろを振り返った。

「あら。雪、新しいお友達?」

雪はコクリと頷いた。

「なあなあ雪の母さん、由美も一緒に泊めてくれないか?」

「俺からもお願いします!」

「雪のお母さんお願い!」

「由美、一人になっちゃう」

「僕からもお願いします!」

「今日だけでもお願いします」

火蔭・釧濫・蓮蘭・天・柚汰・白陽が順に頭を下げた。由美はその光景に、涙が出そうになった。すると、

「そう、由美ちゃんて言うのね。別に構いませんよ。たくさん居る方が、賑やかになるし」

全員の顔がパッと明るくなった。

「雪ちゃんのお母さん!ありがとうございます!」

由美はペコリとお辞儀をした。

  

*    *    *         

 

 一方事故現場の方では、大騒ぎになっていた。病院の方では家族の人々が集まり、入り口ではマスコミが殺到していた。

「由美・・・・・目を覚まして・・・・・」

由美の母親は泣きながら、由美の手を握っていた。父親も歯を食いしばりながら、立ち尽くしていた。

 

 その様子を病院の廊下から、見ている人物が居た。

「夜光、あの子の魂は何処へ飛んだんだ?」

その人物は、バスが突っ込んで来た時に、歩道を歩いていた青年だった。

「そう怒るなって、悠也(ゆうや)。まぁ~この世に居ねーて事は、おそらく妖魔界(ようまかい)だろうな」

夜光と呼ばれた妖狐は言った。

「夜光。どうやったら連れ戻せる?」

悠也は真剣な顔で言った。

「おまえが行ったら、無事では済まねーぞ」

「・・・・・それでも構わない。これは俺の責任だ」

夜光は諦めたのか、巨大化し、四本の尾に青い火を灯した。

「行くぜ」

「あぁ」

青い火はやがて炎になり、悠也を包み込むと、二人はその場から消えた。

 

▼本編

adan24-paradise.hatenablog.com

adan24-paradise.hatenablog.com

adan24-paradise.hatenablog.com