妖狐の約束は月の光と共に その3

高校生の時に描いた長編小説。

主人公の棚田勇人(たなだゆうと)は平和に暮らす人間界から

妖怪たちの世界も巻き込む異世界ファンタジーです。

*当時のペンネーム「白桜」のままで描いています

A5版全29ページ(これが最後になります)↓

妖狐(ようこ)の約束は月の光と共に 第三夜

白桜(しろざくら)

*あらすじ*

 京都から少し離れた所に、小さな村があった。村にはこの物語の主人公、棚田(たなだ)勇人(ゆうと)と弟の武人(たけと)は、平和な日々を送っていた。ある日、村の稲荷神社で、従兄(いとこ)の早瀬(はやせ)俊(しゅん)と三匹の妖狐に出会う。

三匹の妖狐、白陽(はくよう)・伍金(ごこん)・黒奏(こくそう)に救われた、勇人・武人・俊の三人が目覚めると、そこは妖怪の世界『妖魔界(ようまかい)』だった。

勇人達は白陽達に連れられ、妖狐の長、夜光(やこう)と出会う。夜光は勇人達に、四つの宝玉を復活させ、闇の秘宝『砡王(ぎょくおう)』を、再び封じる使命を言い渡される。

 旅に出た六人は、赤しゃぐまの火蔭(ひかげ)・華楠(かなん)兄妹の案内の元、『夏(か)の国』へと向かう。向う途中津波に襲われ、勇人一行は別れてしまう。勇人を含む四人は、三年前に沈んだ夏の国、『龍雹島(りゅうひょうとう)』に流され、鯨一族頭領の釧濫(せんらん)と出会う。一方、武人を含む四人は、巨大な帆船『蛟来号(きょうらいごう)』の船員に発見される。船長で蛟(みずち)一族頭領、蓮蘭(れんらん)と船員の舜(しゅん)と出会う。それぞれの時代で宝玉復活のヒントを見つけながら、蛟一族の箔蓮(はくれん)、河童一族の羅綺(らき)と様々な妖怪達に助けられ、見事一つ目の宝玉『海王(かいおう)』の復活に成功したのであった……

 

*序章* 翳(かげ)り 

勇人はある夢を見ていた。 

「この感じは・・・・あの時の夢か?」

勇人は当たりを見渡した。前回居た場所とはまた違う所だった。広く、何処までも続く草原。風が吹き、草達が靡(なび)いていた。勇人は誰か居ないか耳を澄ますと、草原の奥に広がる森から、微かに声が聞こえた。音を立てないように、こっそり声の主の元に向かった。森に入り、声の主の近くに辿り着くと、茂みの中からこっそり覗いた。そこには、二人の青年がいた。

(うん?この二人、あの時の二人か?)

前回見た夢では、二人はまだ少年の姿をしていた。時が進んだ世界なのだろうか。

「やったな!夜光(やこう)!俺達遂(つい)に、天狐(てんこ)になれたな!」

黒髪の青年は、目を輝かせながら言った。

「そうだな夜尾(やお)。これでやっと、妖狐族(ようこぞく)も平和になるな」

もう一人の銀髪の青年は言った。二人共天狐になれた事に、とても喜んでいた。天狐とは、妖狐族の中でも、千年生きた者だけがなれる位だ。夜尾は言った。

「おっと、そういやー俺親父(おやじ)に呼ばれてんだった!」

夜光は冷静に言った。

「早く行ってやれ。そう言えばお前の組では、長になる者は何か証しみたいな物を、貰うと聞いたが・・・・それか?」

夜尾は慌てながら言った。

「多分な。じゃっ!また明日な!」

黒髪の青年は妖狐の姿になり、遠くへ飛んで行った。銀髪の青年も妖狐の姿になり、黒髪の青年とは反対の方角へ飛んで行った。勇人はその場に止まっていたが、少しずつ目線が高くなっていた。勇人は顔が真っ青になった。

「もしかして・・・・お約束の!?」

勇人はそのまま空高くまで上がり、ものすごいスピードで飛ばされて行った。

 

 

 勇人は茂みの中に、勢い良く落ちた。幸い掠(かす)り傷で済んだようだ。

「いって~!何この扱い!マジふざけんな!」

勇人は成るべく小声で言った。

「にしても、夜光って今の善狐組(ぜんこぐみ)の長だよな。俺は過去の時代に、タイムスリップしているのか?」

勇人の頭は混乱していた。頭の中を整理しようと必死になっていると、勇人の居る茂みの向かいで、声が聞こえた。勇人は起き上がり、こっそり茂みから覗いた。そこには、さっきの黒髪の青年、夜尾が居た。夜尾の隣には、夜尾とよく似た男性が居た。男性は真剣は顔で、夜尾に言った。

「夜尾。遂に天狐になったな。お前に、長の証を渡さないとな」

夜尾は真剣な顔で言った。

「親父・・・・俺正式に長になったら、俺が何をしてもいいんだよな?」

男性こと青年の父親は、ゆっくりと頷いた。頷いたのを確認すると、夜尾の顔が一気に明るくなった。父親は立ち上がり、大事そうに何かを抱えて戻って来た。父親は抱えていた物を置いた。夜尾は気になって覗いて見ると・・・・小さな木の箱だった。父親は言った。

「さあ夜尾、この箱の中にある物が、長の証だ」

夜尾はゆっくりと箱の蓋(ふた)を開けた。蓋を開けた瞬間だった。箱の中から、どす黒い煙が辺りに立ち込めた。夜尾は慌てて蓋をしようとしたが、もう遅かった。煙の勢いに負け、夜尾は弾き飛ばされた。

「いってー。親父!こいつは一体何なんだ!」

夜尾は煙の中に居ても、平然としている父親に向かって叫んだ。

「言ってなかったか?これは、野狐組が善狐組を倒す為の、重要な物だ」

父親は言い終わるのと同時に、体がまるで土のように崩れていった。すると、箱の中から煙と共に、漆黒の小さな玉が浮かんだ。その玉から声が響いた。

「我の魔力に最後まで耐えるとは、大した奴だ。さて、次に我と契約を結ぶ者は何処だ」

夜尾は構え、目に涙を溜ながら玉に向かって叫んだ。

「お前・・・・よくも俺の親父を!!」

玉は夜尾の殺気をものともせずに言った。

「これは驚いた。我の殺気に耐える者が居るとは・・・お前、我と契約せぬか?そうすれば、お前の願いを叶えてやろう」

夜尾は殺気を放ちながら言った。

「ふん!誰がお前の誘いに乗るもんか!」

玉は言った。

「そうか・・・・お前の父親は、我と契約をした。そして、力を与え、ここで朽ち果てた。我はお前が欲しい」

夜尾は一瞬動きが止まった。だが、直ぐに構え、叫んだ。

嘘だ――――!!お前は絶対に許さね――――!!

夜尾は玉に向かって走り出した。

「愚かな・・・・」

玉は漆黒の光を放ち、夜尾を包み込んだ。

(夜光・・・・すまねー・・・・・)

夜尾は意識を失い、倒れた。勇人は叫び声を上げそうになったが、何とか耐えた。玉は夜尾の側に浮いてきた。玉は夜尾の体の中に入り込んだ。夜尾は起き上がり、空を見上げて言った。

「くくく・・・・我の復活は目前だ・・・・」

玉に乗っ取られた夜尾の高笑いが、何処までも響いた。勇人はあまりの恐さに、立てなくなっていた。すると、勇人の目の前が真っ暗になり、意識を手放した。

 

*第一章* 闇の狐 

 妖魔界(ようまかい)の最北端。森が広がり、濃霧が森を包んでいた。森の奥に巨大な岩山があった。岩山の中腹に洞窟があり、灯りが一つもない、闇が広がっていた……

 

「夜尾様、使いの者から報告がありました」

「ほう。どのような内容だ?」

「夏の国が、復活したとの事です」

夜尾は眉間に皺を寄せたと思いきや、突然笑い出した。

「はっ、はっ、はっ!!遂に姿を現したか。まさか、夏の国を復活させるとはな」

夜尾は暫く笑っていた。まるで、この状況を楽しんでいるかのようだ。

「で、奴らは今何所に?」

「冬(とう)の国に向かっております」

「冬の国か。羽黒(はぐろ)」

洞窟の暗闇に、漆黒の翼が現れ、一人の男が姿を現した。

「お呼びでしょうか?」

「あぁ。どうやら例の一族が、この妖魔界に来たようだ。今奴らは、冬の国に向かっている」

羽黒はニヤリと笑った。

「その一族、我々にお任せを」

「任せた。必ず、生け捕りにしろ」

羽黒は翼を広げ、暗闇の中へ消えて行った。