妖狐の約束は月の光と共に その2-5

その2-5

*第九章* 昇龍島(しょうりゅうとう)と昇龍式(しょうりゅうしき) 

 次の日、俊・白陽・黒奏の三人の傷が回復し、俊一行は蛟来号に乗っていた。蛟来号は次の目的地、昇龍島へ順調に進んでいた。甲板にいる蓮蘭は言った。

「こりゃぁ驚いた。あのケガは一日では治らないぞ。普通」

武人も、俊達の驚異的な回復力に驚いていた。俊は言った。

「昨日は武人君が頑張ってくれたし、新たな仲間も増えたし、じっとなんかしていられませんよ」

蓮蘭は言った

「ま、無理はするなよ。次が祭りで最後に来る昇龍島だ。いいか、ここは一番危険な島だ。気を引き締めろよ?」

蓮蘭のただならぬ様子に、俊一行は気を引き締めるのだった。

 

 

 龍雹島では、最後の祭り『昇龍式』を始めるところだった。昇龍式とは、この島に住んでいる男の子達が、大人と認めて貰う式だ。人間界でいう成人式だ。だが、簡単に認めて貰えないのが妖魔界の祭りだ。水門を開け、勢い良く流れる川を進まなければならない。この祭りに、なぜか勇人と伍金だけが、強制参加させられていた。勇人は言った。

「何で、俺と伍金だけなんっすか?」

「そうだ、そうだ!」

伍金も勇人と同意見だった。

火蔭は言った。

「仕方ないだろ。おまえらはまだ子供だからな。それに勇人、あともう少しで謎が解けそうなんだろ?」

勇人は頬を膨らまして、渋々参加する事にした。勇人達の所に、釧濫がやって来た。

「おっ、勇人と伍金が参加かぁ~。ま、俺が付いてるから安心しろ!」

勇人・伍金は目を輝かせた。

「よっしゃー!伍金!頑張ろうな!」

「おう!」

単純な二人だった。

釧濫は町の人に合図を送った。町の人達は、水門を開け始めた。

ゴゴゴゴゴ!!

堰き止められていた水が、勢い良く川に流れて来た。水位が上昇し、流れが速くなっていった。川底にはゴツゴツした岩が、たくさんあった。洗礼式に進んだ川より、明らかに進みにくいのが分かる。

「げっ!また川渡り!」

「勘弁してくれ~」

勇人・伍金は不満タラタラで言った。

「ハハハ!!二人共、頑張れ!!」

と釧濫は言った。町の男の子達と一緒に、勇人達は川を進み始めた。

 

 

 蛟来号は、昇龍島が見える所まで来ていた。俊達は甲板から昇龍島を眺めていた。港にはたくさんの船が停泊し、賑わっていた。何処が危険なのだろうか?蓮蘭は言った。

「ここが昇龍島だ。ここは、一角一族が統治している」

俊は言った。

「一角一族・・・・」

その時、

フューン・・・・・ドーン!!

蛟来号の近くの海に、大砲の弾が落下した。もう少しで当たるところだった。舜が慌てて甲板にやって来た。

「船長!一角一族っす!」

「来たか」

昇龍島の港から、巨大な船が接近していた。蛟来号に引けを取らない、和風の船だった。方角からすると、大砲を撃ったのはこの船のようだ。蓮蘭は港からやって来た、船に向かって言った。

「おい、おまえら!何様のつもりだ!」

船の甲板に、一人の男が立っていた。バンダナをし、藍色の髪を靡かせていた。額には一本の角があった。男は皮肉たっぷりに言った。

「これは、これは。異国船かと思いましたよ。蛟来号船長、蓮蘭さん」

蓮蘭はちっと舌打ちをした。蓮蘭が最も嫌っている相手だった。

「やはり、貴様か。霻禮(ふうらい)号船長、夕州(ゆうしゅう)」

「河童一族の珈泉に認められたからって、図に乗らない事だな。異国民よ」

「黙れ!貴様に我らの故郷を、貶(けな)される覚えはない!」

「ふん!何とでも言うがいい。ここから先を通過する事は、認めない!」

蓮蘭はあの時の事を思い出した。

「ふん!よっぽどあの時の勝負に、拘(こだわ)っているようだな」

夕州の顔がピクリと動いた。

「何だと」

蓮蘭はある提案をした。

「なら、降龍(こうりゅう)島までどちらが先に付くか、白黒はっきりしようじゃねぇーか!」

「面白い。受けて立つ!おまえ達、行くぞ!」

霻禮号は舵を取り、降龍島に向け進み出した。蓮蘭は素早く言った。

「進路変更!目指すは降龍島だ!おまえら行くぞ!」

こうして、蛟来号と霻禮号による航海勝負が始まった。

 

 

 龍雹島では、勇人・伍金・釧濫が目的地、昇龍神社に向けて川を進んでいた。洗礼式の時より、体力の消費が激しかった。釧濫は、二人のスピードに合わせて進んでいた。釧濫は言った。

「二人共、大丈夫か?」

勇人は何とか声を絞り出した。

「何・・・とか・・・」

そう言いつつも、かなり無理をしていた。釧濫は勇人に、気になっていた事を質問した。

「なぁー勇人。おまえ、棚田家の者だろ?」

勇人は驚き、釧濫の顔を見て言った。

「どうしてそれを!?」

釧濫はやっぱりな。と言った。

「ここの宝玉『海王(かいおう)』の番人は俺だからな。勇人が来た時俺はすぐに、宝玉を修復しに来た事は分かっていた」

勇人は少し黙ってから言った。

「じゃぁ、釧濫さんはもう・・・・・」

釧濫は黙って頷いた。龍雹とにいる住民は、勇人達意外はもう生きていない。釧濫は言った。

「この島が今残っているのは、宝玉に残った最後の力の御陰だ」

勇人は黙って聞いていた。釧濫は言った。

「もしこの祭りが終わったら、宝玉海王を地上に持って行ってくれないか?」

勇人は目を丸くした。宝玉を持って行く事が、どういう意味をするのか分かるからだ。勇人は困惑した顔で言った。

「そんな事をしたら・・・・・」

「頼む。もうおまえにしか、この国は救えないんだ」

釧濫は勇人に深く頭を下げた。

「・・・・・分かりました。必ず地上に帰って、この国を救います!」

勇人は承諾した。釧濫の顔が明るくなった。

「ありがとうな!あっ、あと蓮蘭っていう人に会ったらよ、ありがとうて伝えてくれないか?」

「はい。分かりました」

その後、釧濫はヘロヘロの二人を気遣いながら、目的地の昇龍(しょうりゅう)神社(じんじゃ)を目指した。

 

 

 蛟来号と霻禮号は降龍島に向け、白熱の航海バトルが繰り広げられていた。船の中では、船員全員が大忙しだった。蓮蘭は甲板で船の指揮をしていた。

「おまえらモタモタすんな!渦に飲まれるぞ!」

霻禮号でも夕州の声が響いていた。

「おまえ達、グズグズするな!我らの航海術が、夏の国一番だ!」

一方俊達は、この近辺の海域は危険だと言われたので、甲板から船室に移動していた。俊は箔連に聞いた。

「箔連。どうして蛟一族は、こんなに他の一族と仲が悪いの?」

箔連は蛟一族の事について、語り出した。

昔、蛟一族は夏の国の住人ではなかった。別の島に住んで居た蛟一族は、新たな場所を求め航海に出た。そこで出会ったのが、夏の国の三大勢力、一角一族・河童一族・鯨一族だった。鯨一族は蛟一族をすぐに受け入れたが、一角一族と河童一族は認めなかった。俊は言った。

「だからこんなに仲が悪かったんだ」

箔連はあぁと言った。武人が

「箔連。蛟一族と一角一族は、一回勝負した事があるの?」

と聞くと、

あぁ。その時は、一族が勝ったがな

と言った。武人が何かを言いかけたその時、

ガーン!!

何かが勢い良くぶつかった音が鳴り響いた。どうやら蛟来号ではなく、霻禮号の方からのようだ。武人は椅子から立ち、甲板に向かって走り出した。俊は言った。

「あっ!武人君!」

俊も椅子から立ち、箔連は俊の肩に乗り、甲板に向かった武人を追った。

 

 

「俊兄!あれ!」

先に甲板に来た武人は指を指した。俊と箔連は指を指す方向を見た。その先には、航海ミスをした霻禮号が暗礁(あんしょう)に乗り上げていた。船は傾き始め、今にも沈没してしまいそうだ。甲板に居た夕州は、船員の報告を聞いて驚いていた。夕州は言った。

「暗礁に乗り上げただと!?」

「はい!このままでは、転覆してしまいます!!」

蓮蘭は少し経ってから、霻禮号の異常に気が付いた。霻禮号は更に傾いていた。海風が吹き荒れ、霻禮号は窮地に陥っていた。蓮蘭は慌てて船員に指示を出した。

「おまえら!霻禮号の船員を、こっちに乗せろ!急げー!!」

蛟来号の船員は小舟に乗り、霻禮号に向かって行った。海風が吹いている為、中々霻禮号に近づけなかった。俊は言った。

「だめだ!間に合わない!」

俊の肩に乗っていた箔連は言った。

・・・・我が、時間を稼ごう」

箔蓮は俊の肩から降り、海に飛び込んだ。海風で吹き荒れた海を泳ぎ、箔連は霻禮号の側に着いた。元のサイズに戻り、傾いていた霻禮号を体で押さえた。蓮蘭は言った。

「今だ!急げー!」

 

 

 霻禮号に乗って居た船員は、全員無事蛟来号に乗せる事に成功し、昇龍島に戻っていた。あと一歩遅れていたら、霻禮号の船員は助からなかった。蛟来号から降りた夕州は言った。

「何で、俺達を助けたんだ!おまえをバカにしたんだぞ!」

蓮蘭は言った。

「ふん!そんなの知った事か!助ける事に、一々理由何かある分けないだろ」

夕州は目を丸くした。

「・・・・ハハハ!そうだな。助ける事に理由はないな」

夕州は参ったと言い、白旗を振った。一角一族が、蛟一族を受け入れた瞬間でもあり、夏の国が一つになった瞬間でもあった。

 

 

 龍雹島では、勇人達は昇龍山(しょうりゅうざん)の頂上にある目的地、昇龍神社に辿り着いていた。大きな青い鳥居があり、昇龍神社も青を基調とした豪華な本殿があった。勇人達が住んでいた村にある稲荷神社と、同じくらい大きな神社だ。釧濫は言った。

「二人共、よく頑張ったな!」

勇人・伍金は、もう疲労で動けなくなっていた。勇人は神社の広場にある、神木にもたれ掛かり空を見た。空は茜色に染まり、星々が輝きつつあった。空を眺めていると、あの時の歌を思い出した。

「海、第二の海が染まる時・・・」

勇人は、はっ!と思い付き、立ち上がった。直ぐに釧濫の所に向かい慌てて聞いた。

「釧濫さん!第二の海ってもしかして・・・」

「あぁ。空の事だ。何で知ってんだ?」

勇人は周りに人が居ないか、確かめて言った。

「俺・・・聞いたんです。海の中で歌を。何だかすごく切なかった・・・」

釧濫はそうかと言った。勇人は、これまでのヒントを整理した。

(龍雹島、海、夕日・・・全てを映し出せる所か)

勇人は言った。

「他に高い所は無いんですか?」

釧濫は考えた。

「う~ん・・・彗龍島(すいりゅうとう)だな。宝玉もそこにある。宝玉は修復出来そうか?」

釧濫は不安な顔を勇人に向けた。勇人は明るく答えた。

「大丈夫ですよ!俺に任せて下さい!夏の国を絶対復活させます!」

釧濫は任せたと言い、昇龍神社からの景色を眺めた。勇人一行も釧濫と一緒に眺めた。

(全ての答えは、彗龍島にある)

 

 

 その夜、勇人一行は釧濫の許可を得て、昇龍神社で泊まる事になった。布団に入った勇人は、直ぐに深い眠りに付いた。夢の中では、一人で歩いていた勇人は、人影を発見した。近くに行ってみると、正体は俊・武人の二人だった。勇人は二人に声を掛けた。

「俊兄!武人!」

二人は振り向き、勇人の姿を見て驚いた。勇人は言った。

「俊兄、武人。俺宝玉の謎、全部分かったんだ!」

俊は言った。

「本当かい!?」

「あぁ。全ての答えは、彗龍島で龍雹島・海・夕日を宝玉に映し出す事だ!」

俊・武人は納得をした。河童一族の泉珈の話とも一致する。武人は言った。

「明日彗龍島って所に、行けば良いんだね!」

「そうゆう事!そんじゃ、また明日な!」

勇人が言い終わるのと同時に、俊・武人の姿は消えた。

 

*第十章* 彗龍島(すいりゅうとう)と海王(かいおう) 

 勇人達は釧濫に船を漕いで貰い、龍雹島から少し離れた小島、彗龍島に辿り着いた。伝説によると、彗龍島は青龍が最初に降りた立った島だと言われている。島の人々はこの島を『始まりの島』とも呼んでいるそうだ。龍雹島とはまた違った、神秘的な島だ。勇人は釧濫に頭を下げて言った。

「釧濫さん。今まで本当にお世話になりました」

釧濫は明るい顔で言った。

「良いって事よ!火蔭!最後に会えて、俺は嬉しかったぜ!」

「釧濫さん・・・」

火蔭はしゅんとした顔で言った。釧濫は奥の森に、指を指して言った。

「この森の奥の洞窟に宝玉がある。それを取れば、おまえらを地上へ導いてくれるはずだ。俺は天から、夏の国の復活を見守ってるぜ」

勇人は釧濫と握手をし、泣くのを我慢しながら森に入って行った。この国を名残おしく思いながら。

 

 

 俊一行は蛟来号に乗り、昇龍島から離れた所にある、彗龍島に辿り着いた。蓮蘭は森を指して言った。

「この森の奥に洞窟がある。そこで会える可能性は高いはずだ」

俊は冷静に言った。

「行きましょう。勇人君達が、待っているかもしれません」

「あぁ。行こう。夏の国の復活の為に」

俊一行は森に入り、洞窟を目指した。

 

 

「あった!あれだ!」

勇人一行は森を抜け、洞窟に入っていた。洞窟に入って大分奥に入った所で、勇人は輝いている物を発見した。宝玉『海王』は輝きをほとんど失い、無惨(むざん)に割れていた。勇人は慎重に扱いながら、釧濫に貰った風呂敷に入れた。勇人は言った。

「これでよし。みんな!海王に触れてくれ!」

勇人一行は全員が、風呂敷に入った海王に触れた。その瞬間、洞窟内の時空が歪み、洞窟は崩壊していった。海王から目映い光が放たれ、全員光に包まれて消えた。

 

 

俊一行は森を抜け、洞窟の奥に来ていた。俊・武人は何か気配を感じとった。すると、洞窟内の時空が歪み、巨大な目映い光が現れた。暫くすると光は消え、勇人一行は地面に落ちた。勇人はお尻をさすりながら言った。

「いってー!!もっと、ソフトな降ろし方は出来ないのかよ!」

グチグチと文句を言っていると、俊・武人は笑いながら勇人の所に行った。俊・武人は言った。

「勇人君!お帰り!」

「お兄ちゃん!お帰り!」

「あっ!俊兄!武人!ただいま!」

三人は抱き合い、再会を喜び合った。だが、ゆっくりしている暇はなかった。蓮蘭は言った。

「そこの三人。夕方までそんなに時間はないぞ!」

俊はあっと言って、地面に座っていた勇人を立たせた。俊は言った。

「勇人君!武人君!行こう!彗龍山(すいりゅうざん)へ!」

全員走って洞窟の出口へ向かった。すると、突然大量の妖怪が現れた。禍々しい殺気を放ちながら、勇人達の周りを取り囲んだ。妖怪達の尻尾には、野狐組の文様が刻まれていた。火蔭は舌打ちをして言った。

「こいつらは全員野狐組か。勇人・俊・武人。おまえ達は先に行け!」

火蔭は妖怪達の方へ走って行った。箔連も加わり、妖怪達との激しいバトルが始まった。火蔭は手から炎を出し攻撃をすると、野狐組の妖怪達がちりぢりになった。その隙に俊は勇人・武人の手を掴み、出口に向かって走り出した。洞窟を抜けた三人は、彗龍山の頂上を目指した。

 

 

三人は彗龍山を駆け上がり、野狐組に出会う事なく、無事に頂上に辿り着いた。頂上に着いた頃には、ちょうど夕暮れ時になっていた。勇人は叫んだ。

「間に合ったー!」

俊は息を整えてから言った。

「よかったー。よし。勇人君、武人君。やろう」

勇人・武人はうん!と言った。勇人は手に持っていた風呂敷を開き、三人は手に海王の欠片を慎重に持った。三人は欠片を乗せた手を持ち上げ、彗龍島からの風景を映し出した。映し出してから暫くすると、海王はあの目映い光を放ち、光が消えると、元の一つの宝玉に戻っていった。勇人は言った。

「直った!」

三人が喜び合った時だった。

ゴゴゴゴゴ!!

今までに感じた事の無い、大地震が発生した。海では巨大な津波が発生し、海底から何かが見え始めた。そのまま水面まで上昇し、今まで山の頂上しか見えていなかった島が、本来の山になり、龍雹島全土が現れた。龍雹島が現れたと同時に、大地震は次第に治まっていった。龍雹島の形は正に、龍の壮大な姿だった。俊は感動で胸がいっぱいだった。

「これが、龍雹島・・・」

武人は言った。

「すごーい・・・」

勇人は目に涙を溜ながら言った。

「あぁ。やっぱり最高だよ・・・・・釧濫さん、俺遣(や)りましたよ」

勇人の目から涙がこぼれ落ちた。みんなの思いが、夏の国の復活を果たしたのだった。

 

*第十一章* 青龍(せいりゅう)舞い降りる

 龍雹島が海底に現れたと同時に、野狐組は諦めたのか退散して行った。勇人達は蓮蘭に、夜の航海は危険だと言われた為、彗龍島で夜を明かす事になった。勇人・俊・武人は原っぱを発見し、寝っ転がって夜空の星々を眺めていた。人間界では、こんなに綺麗な星々を見た事がなかった。星を眺めながら、勇人は言った。

「釧濫さん、無事天国に行ったかなぁー・・・」

俊・武人は行った。

「大丈夫だよ。きっと」

「そうだよ。お兄ちゃん」

野狐組が退散した後、勇人は龍雹島であった出来事を話し、俊・武人は地上で起きた出来事を話した。蓮蘭は釧濫の伝言を聞き、大泣きしていた。

暫く星を眺めていると、流れ星が流れ始めた。流れ星は次第に数が増え流星群になり、流星群は勇人達の所に向かって来た。

「俊兄。あれは何だろう?」

流星群の中に何が別の影があった。俊は目を凝らした。

「う~ん・・・龍?」

謎の影は流星群から外れ、肉眼で確認出来る所までやって来た。勇人は言った。

「あれって・・・もしかして・・・青龍か?」

龍は彗龍島に舞い降り、勇人達がいる原っぱに着地した。そう、まさに神が目の前に居た。龍は言った。

そなた達が棚田家か?

勇人は答えた。

「そうです」

龍は勇人達に頭を下げた。

そうか。そなた達の御陰で、夏の国は復活した。礼を申す

勇人は言った。

「あの声は青龍さん、あなただったんですね?」

あぁ。海王の力がなければ、我はこの世界に来る事が出来ぬのでな。そなたなら、我の声が聞こえると思ってな。そこでだが、我の力が使えるようになったのだが、これを期に、そなたら三人の願いを一つ叶えようと思うが・・・・どうする?

勇人は俊と武人を見た。二人は勇人に頷いた。三人の願いは同じだった。勇人は青龍の方を見た。

「じゃぁ、叶えてくれますか?俺達の願い」

あぁ。聞こう

勇人は少し間を置いてから言った。

「俺達の願いは・・・・・・・」

 

*最終章* 夏の国よ、永遠に

 龍雹島が復活してから、数日が経った。今日は龍雹島の首都青凜に、夏の国の妖怪達が集まっていた。広場は妖怪達で賑わっていた。勇人は言った。

「良かった。あの二人が幸せになれて」

俊・武人は頷いた。青凜の広場には、挙式の舞台がセットされ、花がたくさん飾られていた。衣装を着た司会役の舜が、舞台に上がった。

「それでは準備が整ったところで、新郎新婦の入場っす!」

新郎新婦の二人、釧濫と蓮蘭が花道を進んでいた。二人のお揃いのイヤリングが、一段と輝いていた。

「わぁー!!」

広場に集まった妖怪達と勇人達は、二人の祝福を祝った。勇人は釧濫・蓮蘭を見て言った。

「俺達の願い、叶ってよかった」

 

―三人の願い。それは、昔の元の龍雹島に戻す事。島の人々が笑顔になる事・・・・・勇人達の旅はまだまだ続く。

 

続く

 

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