妖狐の約束は月の光と共に その2-4

その2-4

*第八章* 龍願島(りゅうがんとう)と幸祈式(こうきしき) 

洗礼式が終わり二日が経った。勇人一行は次なる目的地に向かっていた。二番目の祭り、幸祈式(こうきしき)だ。勇人は幸祈式が行われる山を見てはっ!と何かを思い付いた。

「よし!あの山は正しく、テーブルマウンテンだ!!

伍金は賺(すか)さず反論した。

「おい。あれはテーブルじゃねぇ。プリンマウンテンだ!」

その山は、頂上部分が真っ平らな形をしており、台形に近い形をしていた。勇人はテーブルを連想し、伍金は以前勇人達がいた人間界食べた、プリンを連想した。火蔭は言った。

「センス低いな・・・・・」

「ぶっ、ハハハハ!!こいつは傑作だな!」

釧濫はまたもや大爆笑だった。勇人はボソリと言った。

「俺、結構悩んだのに・・・・・」

「オレも・・・・・」

密かに傷ついている勇人と伍金だった。

 

 

 数時間後、ようやく頂上に辿り着いた勇人一行は、息を飲んでいた。そこには大きな湖があり、太陽の光が反射し、様々な色が生まれ、何とも煌びやかだった。真ん中には小さな島があり、藤の花が咲き乱れていた。幸祈式は、夫婦の人と今年結婚予定の男女が小舟に乗って、湖の小さな島に向かって行く。夫婦円満を願い、島にある小さな池に身代わりの人形を入れるのだ。釧濫は言った。

「本当は、俺も行く予定だったんだがな」

「えっ?」

勇人は釧濫を見た。釧濫の表情は、何処となく悲しい表情になっていた。

(もしかして・・・・・釧濫さん、分かってこの祭りを?)

勇人は何だか、居たたまれない気持ちになった。火蔭は言った。

「釧濫さん!元気出しましょうよ!今日は祭りじゃないですか!」

「そうだな!みんなの幸福を、一緒に拝まないとな!」

釧濫の顔がいつものように明るい表情になった。それを見た勇人は、安心して祭りを見学していた。

 

 

 龍神島から龍願島に向け、俊一行を乗せた蛟来号は、順調に海を進んでいた。俊は言った。

「わざわざ船を出してくれて、ありがとうございます。蓮蘭さん」

「あぁ。別に気にすんな!おまえらの協力を買って出たのは、俺だしな!」

蓮蘭にこの旅の目的を話した時、蓮蘭は快く引き受けてくれたのだった。

「ところで、俊」

「何ですか蓮蘭さん?」

蓮蘭の表情が少し暗かった。蓮蘭は言った。

「俺は、三年前に大切な人を失った・・・・・その人を海から救ってくれないか?」

俊は直ぐに答えた。

「何言ってるんですか?僕達はみんなを救うため、そして、僕達の大切な人達を救うためここに居るんです」

蓮蘭は一瞬、俊の姿が釧濫の姿に見えた。蓮蘭は思った。

(もし釧濫が俺と同じ立場なら、俺と同じ事を言うだろうな・・・)

蓮蘭は言った。

「なら、俺は出来る限りの事をする。約束する」

俊は深々と頭を下げた。

「ありごとうございます」

 

*   

 

 蛟来号は、龍神島と龍願島の間にある渦潮を難無く越え、龍願島に無事辿り着いた。船から降りた俊は言った。

「ここが、龍願島・・・」

この島は三年前までは、幸祈式という祭りが行われていた。そこから、龍願島と呼ばれるようになったそうだ。だが、龍神島とは違い、島全体がうっすらと霧に覆われ、何処か殺風景だった。蓮蘭は言った。

「行くぞ。河童一族の屋敷へ」

 

 

 蓮蘭の案内により俊一行は、立派な屋敷の前に来た。中に入ると、中はとにかく広かった。飾られている壺や剥製(はくせい)・・・・どれも高級そうな物ばかりだった。俊一行はこの屋敷に住んでいる河童一族、羅綺(らき)に案内してもらっていた。蓮蘭とは親友だそうだ。

「ここですよ~」

羅綺はある部屋の前に止まった。その部屋は、この屋敷では一番広い部屋だ。

「お父さん、入りま~す」

部屋の中に入ると、そこには一人の男が居た。ツルツルに磨かれた頭、その上にある皿がキラキラと輝き、派手な着物を着ていた。

「おぉ、羅綺。どうしたんじゃ?」

「お父さんに、お客さんを連れて来たんだ~。入って良いよ~」

羅綺に言われ俊一行は、部屋の中に入って来た。最後に入って来た蓮蘭を見て、男は驚愕した。

「蓮蘭!?」

蓮蘭は男に向かって言った。

「なっ!?珈泉(かせん)!?」

珈泉は蓮蘭に向かって言った。

「なぜ貴様がここに居る!」

「ふん!おまえが居るって聞いてたら、ここにはこねーよ!」

「何をー!!」

「うんだと、コラ!!」

蓮蘭と羅綺の父こと珈泉は、口喧嘩を始めた。昔からこの二人は仲が悪いのだ。二人の間に火花が散っていた。暫く我慢していたが止まりそうに無いので、俊が強引に間に入った。

「二人共、落ち着いて下さい!」

蓮蘭・泉珈を、強引に元の位置に座らせた。俊は怒りを抑えながら、冷静な声で言った。

「僕達は青龍様についての話を聞いたら、直ぐに帰ります」

泉珈はふんぞり返って言った。

「ふん!誰が教えるものか!異国の妖怪なんかに!」

蓮蘭は大声で言った。

「この、ハゲ親父が!」

「ムキー!!」

珈泉は激怒した。白陽は蓮蘭に言った。

「蓮蘭さん落ち着いて下さい。大人げないですよ。珈泉さん、どうかお願いします!何でもしますから、聞かせて下さい!」

白陽は頭を深々と下げた。他のメンバーも白陽に合わせて頭を下げた。泉珈はある案が浮かび上り、

「・・・何でもするのだな?」

白陽は返事をした。

「はい!」

「ふむ。なら、この町の奥にある洞窟から、水晶を持って来い!一番良い奴をな!但し、羅綺とそこにおる異国人の協力は無しだ!良いな!」

俊一行は、最大のピンチを迎えることになった。

 

 

 空が茜色に染まる中、俊達は町から離れた洞窟の前にいた。洞窟の周辺には、不気味な空気が漂っていた。羅綺は言った。

「ごめんねみんな。こんな事になって・・・」

蓮蘭はションボリとした顔で言った。

「すまない。俺も大人げないばっかりに・・・」

俊は明るく言った。

「良いんですよ。気にしないで下さい。では、行って来ます」

俊を含めた四人は洞窟の中に入り、見えなくなった。羅綺は不安な顔で蓮蘭に言った。

「みんな、大丈夫ですよね?」

「・・・俺達が信じなくて、どうするんだい?羅綺」

二人は洞窟の前で待つ事にした。

 

 洞窟の中は暗く、ツルツル滑りやすかった。本当に水晶はあるのだろうかと不安になりながらも、俊達は進んで行った。俊は言った。

「何か滑るね。ここ」

「俊兄。恐いよ~」

「大丈夫だよ、武人君」

暗い所が苦手な武人は、俊にペッタリくっついていた。暗闇でも見えろ白陽と黒奏は、前方に何かを見つけた。黒奏は言った。

「あれじゃない?水晶は」

俊と武人は、黒奏が見ている方角を見た。そこには小さな湖があった。垂れ下がっている鍾乳石から、綺麗な雫が湖に落ちた。湖の奥には、光輝く巨大な水晶があった。白陽は言った。

「何か・・・別の妖気を感じる」

「うん。結構でかいかも・・・」

白陽・黒奏は戦闘態勢になった。白陽は言った。

「俊、武人。俺と黒奏が妖怪を引きつける。その間に、あそこの水晶を取れ」

俊は少し渋った。

「でも・・・・・」

「いいから、行け!」

白陽の声が合図であったかのように、俊と武人は猛スピードで走り出した。それと同時に湖から、水柱と共に巨大な妖怪が現れた。

シャー!!

白陽と黒奏は、妖怪に向かって攻撃を始めた。

「狐火!!」

ボー!!

白陽・黒奏は両手に狐火を出し、妖怪に向かって飛んで行った。一方、俊と武人は何とか水晶の所に辿り着き、羅綺から借りた鶴嘴(つるはし)で水晶を砕き始めた。堅くてなかなか砕けなかったが、俊は何度も鶴嘴を当て、ようやく水晶本体から一部砕けた。武人は、欠片を素早く懐に入れた。俊は早口で言った。

「武人君!入れた?」

「うん!」

「よし!帰・・・・」

俊が走ろうとした時だった。

「武人君、危ない!!」

バシーン!!!

俊は妖怪が振った尻尾に当たり、壁に激突した。

「俊兄!!」

バシーン!!!

白陽・黒奏は俊の方を見た瞬間、勢い良く尻尾に吹っ飛ばされた。

「白陽!黒奏!」

妖怪は武人の所に近づいた。

シャー!!

「うう・・・恐いよ~・・・・お兄ちゃん・・・」

武人は恐さの余り、その場に座り込んでしまった。目から大粒の涙が溢れていた。すると、妖怪は武人に話し掛けて来た。

・・・・・おまえ達は、我の巣を破壊しに来たのか?

「うわぁぁぁ・・・・・・へ?」

武人は泣きながらも、恐る恐る妖怪の方を見た。

もう一度聞く。破壊しに来たのか?

武人は勢い良く首をブンブン振った。妖怪は言った。

おまえ・・・我の言葉が分かるのか?

「うん」

驚いた。まだ我の言葉が分かる者が、居ようとはな。名は何という?

武人は涙を拭いて勇気を振り絞り、妖怪の目を見ながら言った。

「棚田武人です!」

 

 

 洞窟の入り口で待っていた蓮蘭・羅綺は、入り口に向かって来る妖気に気が付いた。蓮蘭は言った。

「・・・おい、何か来ているぞ」

「この妖気はまさか・・・」

羅綺・蓮蘭は構えたが、洞窟から出て来た者に、二人は目を疑った。

「ただいまー!」

そこには、巨大な妖怪に跨(またが)っている武人がいた。気絶している三人は、妖怪の背に乗っかっていた。武人が妖怪を従えていた。羅綺は言った。

「武人君、これは一体どうなってるの?」

「えへへ。箔蓮(はくれん)が、ここまで運んでくれたんだよ!」

蓮蘭は妖怪に言った。

「蛟一族でも位が上のおまえが、従うなんてな。箔連」

「・・・何だか昔に会った、あいつを思い出してな・・・

「・・・そうか」

蓮蘭によると、蛟一族では人の姿になれる者と、妖怪姿のままの者がいる事を知った。俊一行は羅綺の屋敷に向かった。箔連は小さくなり、ちゃっかり武人の肩に乗っていた。

 

 

「これは驚いた。水晶だけでなく、箔連までも従えてしまうとは・・・・・あっぱれだ」

目が覚めた白陽が言った。

「さぁー約束は守って頂きますよ?」

泉珈は武人が渡した水晶を、そっと置いた。

「分かっておる。青龍様についてだったな。文献は残っておらぬが・・・青龍様は、龍雹島全土が見渡せる所を、よく好んで通っていたそうじゃ」

蓮蘭は言った。

「随分と限られてくるな。俺達のゴール地点が」

泉珈は優しい顔で言った。

「今日はここに泊まると良い・・・蓮蘭、さっきは済まなかったな」

蓮蘭は驚いたが、直ぐに返事をした。

「俺も言い過ぎた。すまん」

「えへへ」

武人はニコニコしながら、二人のやり取りを見ているのであった。

 

 

 次の日、龍願島では武人・蓮蘭・箔蘭の三人は、幸祈式が行われていた湖にやって来た。そこは三年前と変わらず、湖は輝いていた。武人は言った。

「俊兄の代わりに、僕が頑張らなくっちゃ!」

肩に乗っている箔連は言った。

余り無理をするでないぞ

蓮蘭は小舟に武人・箔蘭を乗せ、湖の真ん中にある小島に向かって漕ぎ始めた。

 

 

 龍雹島では、無事に幸祈式が終了していた。勇人は、後片付けの手伝いをする為、小舟に乗って湖の小島にいた。片付けをしている最中、厄除けの人形を投げ入れる、小さな池が目に入った。勇人は何となく池を覗いて見た。

「綺麗だなぁ~・・・・あっ」

池を眺めていると、龍願島にいるはずの武人が、水面の端に映っていた。池を通して、お互いの世界が一時的に映っているようだ。暫くすると、武人は何かヒントがないか探していると、小島にある池に気が付いた。武人は池に近づき、池を覗いた。勇人は武人が近づいたのを確認し、試しに声を掛けてみた。

「おーい。武人」

「お兄ちゃん!」

池を覗いていた武人は驚いた。勇人は言った。

「そっちは何か分かったか?」

武人は目を輝かせながら言った。

「うん!青龍様はどうやら、龍雹島全土?を見渡せる所によく行ってたんだって!」

「龍雹島全土だな?分かった!ありがとうな!武人!」

話し終わったと同時に武人の顔が消え、代わりに自分の顔が映っていた。勇人は今まで見た光景を思い出した。

龍神木は・・・違うな。ここも・・・違うって事は)

「次の目的地か?」

後片付けを終え、次なる祭りの場所へ向かって行った。

 

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