妖狐の約束は月の光と共に その2-2

その2-2

 

*第四章* いざ、夏の国へ

ドーン!!バリバリバリ・・・・

空一面が灰色の雲に覆われていた。雷は近くに落ちたが、辺り一面を包んでいる霧で所為で、雷の光はぼやけて見えた。

そんな中、二隻の船が霧の中を進んでいた。船には勇人・伍金・火蔭・華楠。もう一隻には武人・俊・白陽・黒奏が乗っていた。火蔭は言った。

「にしても、相変わらず霧が濃いなぁ~」

勇人は言った。

「本当に濃いよなぁ~・・・」

一行が進んでいる川は、元々は運河として利用されていた。ところが、最近になって霧が発生する回数が増え、最終的に一日中霧に覆われるようになった。火蔭は言った。

「おっ、海に出たぜ」

勇人・伍金・華楠は辺りを見渡した。運河ほどではないが、海も霧に覆われていた。勇人は言った。

「何か一気に広くなったなぁー・・・」

すると、

ゴゴゴゴゴゴ!!

「何か来てるぞ!?」

船に乗っていた全員が下を見た。火蔭は慌てて言った。

「おい!全員船に掴まれ!白陽!運河に戻れ!」

もう一隻の船を漕いでいた白陽は、慌てて運河に戻り始めた。火蔭は必死に漕いだが、間に合わなかった。

ザバーー!!

巨大な水柱が現れ、火蔭達は船ごと宙に投げ出された。その後水面に叩き付けられ、沈んでいった。白陽は言った。

「何があったんだ!?」

ザバー!!

水柱の影響で発生した、巨大津波が白陽達の船に襲い掛かった。

「兄ちゃーん!」

武人の叫び声が響き、そのまま津波に流されていった。

 

ゴポゴポゴポ・・・・

緋衣達は海の中にいた。勇人は薄れ行く意識の中、不思議な声が聞こえた。

海、第二の海が染まる時、我を映し出せ。我の愛し物を映し出せ・・・・

「・・・映・・・・す?・・・・・」

勇人は意識を手放した。

 

*第五章* 蛟来号(きょうらいごう)と蛟(みずち)一族 

 霧が辺り一面を包んでいる中、巨大な中国船風の船が進んでいた。その進んでいる光景は、船の雄大さに霧が圧倒されているようだった。船の甲板に、人影があった。

「・・・今日は一段と霧が濃いな」

一人の女が言った。銀髪に毛先が赤く、右目が隠れていた。上着を羽織っている姿は、何処か威厳に満ちていた。

「何言ってるんですか船長!我々の航海術があれば、こんな霧へっちゃらですよ!」

バンダナをした、少しクセのある銀髪の青年は言った。

「そうだ。我々の航海術の右に出る者無し!」

「それでこそ、我々の船長ですぜ!」

船長の所に一人の船員が、大きな足音を立ててやって来た。

「船長!大変ですぜ!小舟がこっちに流れて来やした!」

「小舟?誰か乗っているのか?」

「五人乗っていやす。どうしやすか?」

「・・・引き上げろ。乗っている者は、全員部屋に運んでおけ」

「はい!」

バンダナをした青年は言った。

「俺も行ってきやす!」

二人の船員は、小舟の引き上げ作業に向かった。

「・・・釧濫(せんらん)。お前さんは一体何処にいるんだ?・・・」

霧の彼方を見詰めながら、一人呟いた。船長の付けているイヤリングは、何処か悲しく輝いていた。

 

 

俊は目を覚ました。どうやら何処かの部屋の中のようだ。辺りを見渡して見ると、ベットで眠っている他のメンバーが居た。

「・・・ここは、何処だろう?」
突然反対側から声が聞こえた。

「ここは蛟(みずち)一族の船、『蛟来号(きょうらいごう)』の一室っすよ!」

俊は素早く後ろを振り向いた。そこには、バンダナをした青年が椅子に座っていた。

「あっ。もしかして、驚かしちゃったか?スマン!俺が悪かった!」

俊は安心した様子で言った。

「いえいえ。僕の方こそごめんなさい」

「おまえさん、良い奴だな!」

部屋の扉が開き、中に船長が入って来た。船長は言った。

「おや、もうお目覚めなのかい?何処か痛いところはないか?」

船長は俊に聞いた。

「はい。何ともないです」

「そうか」

青年は椅子から立ち上がり、船長の近くに来た。

「紹介するっす!我らが蛟一族の長であり、この蛟来号の船長。蓮蘭(れんらん)さんっす!でもって、俺は舜(しゅん)って言うっす!」

「ご丁寧にありがとうございます。僕の名前は、早瀬俊と言います。宜しくお願いします」

俊はペコリと頭を下げた。舜は名前を聞いた途端、目を輝かせながら俊の近くに来た。

「やったっす!俺と同じっす!」

「そうだね。僕も嬉しいよ」

ハハハ!!と二人は盛り上がっていた。海を覆っていた霧が、少しずつ晴れていった。

 

*第六章* 幻の島『龍雹島(りゅうひょうとう)』

「華楠、何か見えて来たな」

「はいです」

火蔭の船に乗っていた四人は、華楠が作り出した水球(すいきゅう)という水で出来た球体の中に居た。水球の御陰で、何とか水面まで上がっていた。

「う~ん・・・・・」

気絶していた勇人が目を覚ました。

「おっ!お姫様のお目覚めか?」

ガバ!

勇人は勢い良く起きた。

「誰が姫様だ!!」

「あんまり揺らさないで欲しいです」

華楠は、頬を少し膨らまして言った。

「あぁ、ごめん華楠ちゃん。て、何だこれ?」

火蔭は言った。

「あぁ。これは華楠が作った、水球って物だ」

話をしていると、前方に島が見えて来た。霧がだんだん晴れていき、島の形がハッキリと見えて来た。火蔭は驚きの余り、口が開いていた。勇人は言った。

「お~い、火蔭。ここは何処だ~?」

火蔭ははっ、と我に返った。火蔭は言った。

「三年前、大災害があったのは聞いたか?」

「まぁ~少しは」

火蔭は険しい顔で言った。

「この夏の国は、国その物が沈んだ・・・」

「まさか・・・」

勇人は恐る恐る島を見た。

「あれ?」

「あぁ」

水球は海に沈んだ夏の国、龍雹島に向かって流れて行った。

 

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