妖狐の約束は月の光と共に その2

高校生の時に描いた長編小説。

主人公の棚田勇人(たなだゆうと)は平和に暮らす人間界から

妖怪たちの世界も巻き込む異世界ファンタジーです。

*当時のペンネーム「白桜」のままで描いています

A5版全46ページ↓

妖狐(ようこ)の約束は月の光と共に 第二夜

白桜(しろざくら)

*あらすじ*

 京都から少し離れた所に、小さな村があった。村にはこの物語の主人公、棚田(たなだ)勇人(ゆうと)が平和に暮らしていた。ある日、村の稲荷神社で、従兄(いとこ)の早瀬(はやせ)俊(しゅん)と三匹の妖狐に出会う。主人公の弟棚田(たなだ)武人(たけと)の三人は、三匹の妖狐と友達になった。三匹の妖狐が居なくなり、村で祭りが行われた時、村人が連れ去られる事件が発生した。主人公を含む三人は、間一髪の所で謎の少年達に救われた・・・・

 

*序章* 約束 

意識を失っている中、勇人はある夢を見ていた。

「ここは・・・・・・何処だ?」

勇人(ゆうと)は見知らぬ場所にいた。勇人以外の者は居らず、月の光だけが勇人を照らしていた。

「・・・・・・静かだな・・・・・・」

と、ぼそりと呟いた。

周りを見渡すと、木、木、木・・・・・・どうやらここは、森の中のようだ。木々の間から月の光が漏れ、何とも幻想的だった。一人ぼっちの勇人は、不安で一杯だった。だが眺めているうちに、不安はいつの間にか無くなっていた。

「・・・・・・はっ!俺何してんだよ!」

当初の目的を思い出した勇人は、取り敢えず歩こうとした時だった。

フュ―――!!

突然、一陣の風が吹き、こちらに近づいて来た。勇人は慌てて、近くの茂みに隠れた。耳を澄ましていると、声が聞こえて来た。

まだ距離があるためか、何を話しているか分からなかった。でも、二人いる事は分かった。その声は、どんどん大きくなってきた。

「おい!待てよ夜光(やこう)!!」

「おい、おい。早くしねぇーと置いてくぞ!!」

フュ――・・・・

声の主達は、風と共に勇人の真上を通過した。勇人は、暫く空を眺めていた。

「・・・・・・何で人?が飛んでんだ?」

勇人の口からは、その言葉を出すので精一杯だった。

「・・・・・・にしても、何か・・・目線が高くねぇ?何だこの浮遊感?」                         

もう遅かった。気付いた時には、森全体が見渡せる高さまで、体は宙に浮いていた。

「へ!?ちょい高くね!?」

一定の高さになると止まって、そのまま二人が飛んで行った方へ、勢い良く飛ばされて行った。

「あああぁぁぁぁ・・・・・・」

 

 

ドサ!

「痛っ!!」

勇人は茂みの中に落ちた。草がクッションになった為、幸い怪我は無かった。上半身を起こし、辺りを見渡した。丘の方を見ると、さっきの二人が座って居た。勇人は気付かれないように、近くの茂みに移動した。二人は丸く光輝く月を背景に、会話をしていた。

「なぁ、夜光」

夜光と呼ばれた者は振り向いた。

「何だ夜尾(やお)?」

「・・・俺達ずっと一緒に、居られるよな?」

夜尾は何か悲しい表情で訪ねた。

「突然何言ってんだよ!俺達ずっと、友達だろ?」

夜光は夜尾に、問いかけるように言った。

「・・・・・・だよな!!俺達ずっと、友達だよな!!」

「あぁ!」
「もし俺達が天狐(てんこ)になったら、善狐(ぜんこ)と野狐(やこ)の戦いを終わりにして、平和にしような!」

「あぁ。約束だ」

夜光と夜尾は握手をした。二人は妖狐になり、何処かへ飛んで行った。二人の姿が見えなくなった瞬間、辺りは真っ暗になり、勇人は意識を失った。

 

*第一章* 再会

目を開けてみると、そこは見知らぬ場所だった。勇人は重い体を起こして、辺りを見渡した。どうやらここは、広い和室のようだ。部屋全体から上品さが感じられる。

「・・・・・・ここは何処だ?」

勇人は立ち上がり、窓から外を眺めた。見た瞬間、勇人は一気に目が覚めた。外は霧に包まれ、そこから見た事も無い木や花が生えていた。霧の中では、何か黒い影が見え隠れしていた。真下は断崖絶壁の崖があり、川の流れる音が響いていた。

「・・・・・・本当に何処なんだよ~ここは~・・・」

勇人が呆然と景色を眺めていると、

パタン!

突然、勇人達がいる部屋の襖が開いた。部屋に入って来たのは、見知らぬ少年だった。少年は勇人を見て言った。

「お!もう目が覚めたのか?タフだな~おまえ」

その少年は、金髪で髪が撥(は)ねていた。瞳の色はライトグリーンで、左の頬に模様が刻まれていた。勇人は警戒しつつ言った。

「・・・・・・おまえは誰だ?」

「あら?分かんない?オレだよ!オ・レ!」

勇人は少年を観察した。

(う~ん・・・・・・うん?この声とこの感じは、何処かで・・・)

勇人はあっ。と小さく言い、少年の方を見て言った。

「もしかして・・・伍金(ごこん)?」

すると、少年の顔が明るくなった。

「あったり~~~!!勇人~~~!!」

伍金は勇人に抱きつき、勇人の顔が真っ赤になった。

「伍金!?何抱きついてんだよ!!」

「何となくだ!」

伍金は更に力を強くした。

「伍金!?おまえ、こんなに力強いのか!?」

「まぁ~なぁ~☆」

パタン!!

部屋の襖がまた開いた。今度は二人入って来た。一人は青年で、金髪の長髪に、瞳の色はライトブルー。右の頬に、模様が刻まれていた。もう一人は少年で、黒髪を二つに結い、瞳の色は紫。両方の頬に、模様が刻まれていた。青年は険しい顔で伍金に言った。

「・・・伍金、おまえ何してんだ?」

「うん?見たままだぜ」

青年は更に、眉間に皺(しわ)を寄せて言った。

「アホか!大体、おまえは・・・」

青年と伍金は、勇人を挟んで口喧嘩を始めた。勇人は我慢が出来なくなり、大声で言った。

おい!俺を挟んで、口喧嘩をするな!!

青年と伍金は口喧嘩を止め、部屋の中は静かになった。勇人は慌てて謝った。

「その・・・あの・・・ごめん。ちょっと言い過ぎた」

伍金は勇人から離れて謝った。

「いや、オレらが悪かった。ごめんな」

青年も勇人に謝った。

「済まない。俺も悪かった」

喧嘩をして五月蠅(うるさ)かったのか、武人(たけと)と俊(しゅん)は目を覚ました。

伍金は暢気(のんき)に挨拶をした。

「おっ!二人共おはよう!!」

武人はボーと、伍金を見てから言った。

「う~ん・・・・・・誰ですか?」

「オレか?オレは伍金だ」

武人と俊は眠そうな顔から、一気に目が覚めた。

「うそ!?」

「君が伍金!?じゃぁ、そこの二人は、白陽と黒奏?」

青年と少年は頷いた。武人は二人の所へ向かった。

「白陽、黒奏。久しぶり~」

白陽と黒奏は笑顔で言った。

「あぁ。久しぶりだな」

「うん。久しぶり~」

六人は暫く、部屋で再会を喜びあった。

 

*第二章* 宝玉と砡王(ぎょくおう)

 霧に包まれた森は、朝日の光と共に消えていった。不思議な世界で六人は、ある部屋に向かっていた。

「ここだ」

白陽が扉の前に止まった。その扉は何とも変わった模様が、浮き彫りになっていた。さまざまな色が使われ、とても華やかだった。俊は言った。

「ここは・・・・・・誰のお部屋?」

「入ったら分かるさ」

暫くすると、誰も押していないのに扉が開いた。六人は部屋の中に入った。部屋の中に入ると、扉の華やかさに負けていなかった。高級な絨毯(じゅうたん)、灯り、椅子・・・・・・どれも細かい所まで、丁寧に作られた物ばかりだ。部屋の奥を見ると、誰かが椅子に座っていた。なかなか来ない為か、奥の人物は言った。

「お~い。そこに居る六人!早く来いよ!」

「はっ、はい!」

白陽は慌てて答えた。

(三兄弟の中で一番冷静な白陽が、ものすごい緊張してる!!)

勇人は緊張しながら、奥に進んだ。

 

 奥に進むと、これまた丁寧に細工が施された、玉座があった。玉座には男が一人座っていた。白陽は言った。

「夜光(やこう)様、三人をお連れいたしました」

「おう。わざわざありがとうな、白陽」

「はい。お褒めの言葉、ありがとうございます」

夜光は一通り話終えると、勇人・武人・俊の三人顔を向けた。

「よっ!オレは妖狐族の長、夜光だ。宜しくな!」

返事をしようとした俊は、勇人と武人を見た。二人共緊張し過ぎて、固まっていた。俊は自分で答える事にした。

「こちらこそ。僕の名前は、早瀬俊と言います。僕の右側に居るのが棚田勇人君、左側に居るのが、勇人君の弟の武人君です」

夜光は目を輝かせながら言った。

「おお!おまえが俊か!いや~三人共大きくなったなぁ~」

俊は呆気に取られた顔をした。夜光は言った。

「あぁ、こうして面と向かって会うのは、今日が初めてか。いやぁ~オレが会いに行った時は、三人共まだ幼い時だったからなぁ~・・・」

勇人・武人・俊は思った。

(この人は一体いくつなんだ?)

夜光はさっきとは打って変わり、真剣な眼差しで言った。

「まっ、自己紹介はここまでにしといて、本題に入るか」

六人は静かに聞いた。

「俺がおまえらを呼んだのは、ある物を直して貰うためだ」

「ある物?」

と俊は訪ねると

「あぁ。この世界の均衡を保つ上で、重要な物だ。俺達はそれを『宝玉』と呼んでいるのだが・・・」

勇人は恐る恐る聞いた。

「もしかして・・・割れたとか?」

夜光はニヤリと笑った。

「察しが良いな。当たりだ」

「やっぱり。でも、宝玉が割れたらどうなるんですか?」

夜光は渋い顔で言った。

「『砡王』っていう物を聞いた事はあるか?」

白陽・伍金・黒奏は目を丸くした。白陽は恐る恐る言った。

「では、あの三年前に起きたあれが・・・」

「あぁ。間違いない」

勇人・武人・俊は、頭にハテナを浮かべていた。俊は言った。

「あのー、砡王って何ですか?」

「砡王は人間と妖怪の間に出来た、まさに闇の産物だ」

「闇の産物・・・・」

勇人は言った。

「その砡王と宝玉はどういう関係で?」

「宝玉は砡王の力を押さえる物。宝玉が割れた事で、力が暴走しているのが現状だ。そして・・・・・・砡王は人間の闇の心、負の感情で力を増す」

俊は真剣な目で言った。

「では、その砡王を誰かが復活させようとしていると?」

「その通りだ。宝玉はその誰かにより壊された」

勇人は一瞬夜光の顔が、曇ったのを見逃さなかった。

(夜光は誰なのか、知っているのか?・・・)

勇人は思ったことを、顔に出さないように言った。

「要は、俺達が宝玉を元に戻せば、村人は帰って来るんですね。でも、何で人間の俺達なんですか?」

夜光はまたニヤリと笑った。

「修冶から聞いたと思うが、おまえらのご先祖様が行方不明になったよな?その時何処にいたかというと、この妖魔界に来てもらってたのさ。宝玉を修復する力を、授ける為にな」

勇人は首を傾げて言った。

「なぜ、力を授けたのですか?」

「宝玉には番人をする一族が付いているんだが、その番人が今回の事件を引き起こした奴らが、襲うようになった。番人がいなくなったら、どうなるかは分かるよな?」

勇人は唾(つば)をゴクリと飲み込んだ。もし番人がいなくなった時、修復する術が無くなる事になる。そうなれば、砡王を復活させた奴らは何をするか分からない。夜光は言った。

「そういう事だ。やってくれないか?」

俊は少し考えてから言った。

「・・・考えさせて下さい」

 

 

時刻は昼の時間になっていた。空は青空で雲が無かった。外はこんなにも天気が良いのに、勇人・武人・俊の三人の居る部屋は何処か暗かった。三人は長い溜め息をついた。

パタン!

部屋の襖が開き、中に白陽・伍金・黒奏が入って来た。伍金は言った。

「よっ!て、何しけてんだよ!!」

勇人は力無く答えた。

「あぁ~伍金。いや、ちょっとな」

俊は白陽に言った。

「あっ、質問しても良いかな?」

「良いぞ」

「ありがとう。じゃぁ、一つ目。宝玉を割ったのは誰?」

白陽は少し経ってから言った。

「・・・野狐組だ」

「野狐組?」

「あぁ。俺達と対立している奴らだ。奴らが絡んでいるのは、間違いない」

妖狐族では二つの集団が存在し、一つは夜光が率いる『善狐組』、もう一つは『野狐組』という集団だ。この二つの集団は、昔から仲が悪く争いが絶えないそうだ。

(うん?何か夢で聞いたような・・・・)

勇人は少し考えたが、夢は夢だと頭の片隅に追いやった。俊は言った。

「二つ目。このまま宝玉が直らず、砡王が復活したら、妖魔界と人間界はどうなるの?」

白陽は少し暗い顔で言った。

「復活した時は、この妖魔界はお終いだ。奴らの世界になり、妖怪達を従え、人間界を真っ先に襲撃するだろう」

この妖魔界は、大昔には存在していなかった。妖怪達は元々人間界に住んでいた。昔は人間と妖怪は仲が良かったが、時代が進につれ、妖怪を退治が頻繁に行われるようになった。妖怪達も人間に対抗するようになり、その集団の中心として野狐組がいたそうだ。白陽は言った。

「野狐組は今でも、人間を恨んでいる。襲撃は避けられないだろう」

俊はう~んと言い、何かを吹っ切ったように言った。

「分かった。じゃぁこれで最後。僕達はこれから何処に行けば良いのかな?」

俊以外のメンバーは、全員驚いた顔で俊の方を見た。

「俊兄、それって・・・」

「本当に・・・・」

「本気か?」

「俊さん・・・」

「俊、引き返すならまだ間に合うぞ?」

順に勇人・武人・伍金・黒奏・白陽は言った。

「本気だよ。こうしている間にも、野狐組は人間界を侵略しよ

うとしている。この事件はもう、僕達の問題じゃない。これは、

魔界と人間界の運命を左右する問題だ。僕達が行動しなきゃ、

誰も救えない。みんなもそう思わない?」

俊の問いかけが、全員の心に響いた。その後六人全員が、旅に

出る事で意見が一致した。

 

こうして、妖魔界そして人間界を救う旅が始まった。

 

*第三章* 赤しゃぐま

「おまえら、準備は出来たか?」

勇人は言った。

「バッチリ!!」

旅をする事を決断してから次の日、六人は夜光の部屋に行き、別れの挨拶をしていた。勇人・武人・俊は、夜光から貰った服を着て満足していた。

「ははは!どうやら、服が気に入ったようだな」

夜光は白陽・伍金・黒奏に、真剣な眼差しで言った。

「白陽・伍金・黒奏、おまえらも気をつけろよ。三人を任せたぞ」

「はい!」

三人は返事をした。六人は、夜光の住む宮殿を後にした。

 

夜光は六人を見送った後、一人自室に戻り椅子に座った。

「・・・夜尾、必ず約束果たそうな・・・」

夜光の声だけが、悲しく響いていた。

 

六人は妖狐族の町『煜火那(ゆうびな)』を歩いていた。町は様々な店が建ち並び、妖狐族や他の妖怪達で賑わっていた。町を見る限りでは、砡王の影響は感じられなかった。勇人は言った。

「白陽、俺達今何処に向かっているんだ?」

「赤しゃぐまの家だ」

「赤しゃぐま?」

勇人はハテナを浮かべた。俊は言った。

「赤い髪の妖怪で、座敷童の仲間なんだよ」

「へぇ~」

伍金は険しい顔で言った。

「でも、簡単に案内してくれるのか?」

「それは・・・行ってみないと分からない」

「・・・・・」

「着いたぞ」

六人は立ち止まった。そこには、古い茶屋が建っていた。側には小さな川が流れ、茶屋に付いている水車が回っていた。何とも長閑(のどか)な感じが漂っていた。白陽は何も言わずに茶屋の中に入り、奥の座敷の方に上がり込んだ。勇人は慌てて言った。

「おい。勝手に入って良いのか?」

「あぁ、構わない。来る時は何時もこんな感じだ」

そう言うと、どんどん奥の方へ向かって行った。

「ちょい、待てよ!」

勇人は慌てて上がり込み、他の四人も勇人の後に付いて行った。

「おーい。火蔭(ひかげ)居るかー?」

白陽は廊下を歩きながら大声で呼んでいた。勇人は言った。

「なぁ伍金。火蔭ってさっき言ってた、赤しゃぐまの事か?」

「おう。赤しゃぐまの名前だ」

茶屋の奥はとても広く、部屋が幾つもあった。暫く歩いて行くと、中庭に出た。真ん中には池があり、小さな橋が渡されていた。周りには松の木が植えられていた。勇人は言った。

「すげ~」

中庭を眺めていると、橋の上に誰かが居た。

「おい、白陽。あれじゃないか?」

白陽は勇人が見ている方へ向いた。

「・・・・・・あれだ」

白陽は何処からか草履(ぞうり)を出し、中庭に出て行った。橋の上に居た青年は、長髪の燃え上がるような赤色で、額には傷跡があった。歌舞伎役者のような、派手な着物を着ていた。白陽は、その青年に声を掛けた。

「火蔭」

橋の上に居た人物はビクッとなった。

「誰だっ・・・て、白陽か!」

「やっと気付いたか。座敷に上がってから、何回も呼んだぞ」

「そいつは悪かった。池の鯉を眺めてた」

池の中にはたくさんの立派な鯉が泳いでいた。火蔭は言った。

「で、俺に何の用?何処かに行きたい所でもあんのか?」

「夏(か)の国だ」

「・・・・・はぁ?」

火蔭は呆気に取られた。

「ちょい待て。夏の国ってあれか?何であの国に・・・・・」

白陽はこの旅の目的を話した。暫くしてから火蔭は言った。

「・・・・・・今あの国に行くのは止めとけ」

火蔭はそれだけを言うと、橋を渡って反対側に行った。勇人は、火蔭が近づいている事に気が付いた。火蔭は、勇人に向かって言った。

「よっ。なんか食うか?」

「良いのか?」

「あぁ。ここは茶屋だぞ?まっ、金を出せとは言わねぇ~し」

「じゃぁ、遠慮無く」

勇人達は和室の方に入って行った。白陽は和室に向かって行った。

 

 

 和室の真ん中に置かれた漆塗りのテーブルに、美味しそうなお団子と、お茶が入った湯飲みが置いてあった。あれから白陽は、何とか火蔭を説得しようと努力していた。火蔭は言った。

「はぁ~・・・白陽。おまえ、変わったな」

白陽は首を傾げて言った。

「そうか?何も変わってないが?」

火蔭はお茶を啜(すす)ってから言った。

「おまえが、ここまで必死になるの初めて見たぜ」

白陽はう~んと考えてから言った。

「・・・確かに。初めてだな」

「だろ?」

ははは!二人は笑顔になった。黒奏は言った。

「本当にお兄ちゃん変わったよね~」

伍金は言った。

「だな。俺もそう思う」

火蔭は言った。

「夏の国に行くなら、あいつを呼ばないとな!」

火蔭は部屋を出ると、二階に上がった。部屋に向かうと、襖を勢い良く開けて言った。

「おい、華楠(かなん)!仕事だ!夏の国に行くぞ!」

部屋の中に居た女の子は、慌てて言った。

「ま、待って。直ぐに行くから」

「おう。早くしろよ!」

そう言うと、火蔭は一階の和室に戻って来た。暫くすると、和室に女の子が来た。二つに結んだ赤い髪で、何とも女の子らしい、かわいい着物を着ていた。

「紹介するぜ。俺の妹、華楠(かなん)だ」

「宜しくお願いしますです」

華楠はにっこりと笑った。勇人も笑顔で返した。

「宜しくな!」

(・・・カッコイイです・・・)

火蔭は不思議そうな顔で言った。

「どうした華楠?」

「なっ、何でもないです!」

そう言いつつも、華楠の顔は赤かった。