妖狐の約束は月の光と共に その1-2

高校生の時に描いた長編小説。

主人公の棚田勇人(たなだゆうと)は平和に暮らす人間界から

妖怪たちの世界も巻き込む異世界ファンタジーです。

*当時のペンネーム「白桜」のままで描いています

A5版全19ページ

「僕の名前は黒奏(こくそう)で三男です。よろしくお願いします」

三匹の紹介は終わったので、勇人から自己紹介をした。

「俺の名前は棚田勇人。よろしく」

「僕の名前は棚田武人です。勇人の弟です。よろしくお願いします」

「僕の名前は早瀬俊です。よろしく」

一通り自己紹介は終わったので、質問タイムになった。最初は、俊からする事になった。

「で、いきなり質問なんだけど、どうして君たち三人は祠の下にいたの?」

白陽はここまでの経緯を話した。

「俺達三人は、もともと“妖魔界(ようまかい) ”ていう所から来たんだ」

「ようまかい?」

と武人は頭に“? ”を浮かべていた。伍金が説明をした。

「オレ達みたいな、妖怪を中心とした世界を“妖魔界 ”て言うんだ」

「へぇ~」

武人が納得したようなので、白陽は話を続けた。

「俺達三人で術の修行をしてたんだ。そしたら、修行中に仮面を付けた、複数の妖怪に襲撃された。俺達は必死に抵抗したが・・・・・追い詰められて、そのまま崖から転落した。気づいたら祠の下にいたんだ」

俊は聞いた。

「その仮面を付けていた者達に、心当たりはないの?」

白陽は答えた。

「いいや。まったく知らない」

「う~ん、どうして君達が狙われたんだろうね・・・・・・」

三人と三匹は、会話に夢中になっていた。そんな中、誰かが階段を上っている事に、全員気付いていなかった。

トントントントン・・・・・・ガチャ!!

「!?」

「!?」

「!?」

「!?」

「!?」

「!?」

全員一斉に扉の方に顔を向けた。俊の部屋に入って来たのは、俊の母綾花(あやか)だった。手にはお盆を持っていた。

「ジュース持って来たわよ」

俊は、冷静なふりをしながら答えた。

「あぁ、ありがとうお母さん」

すると、綾花は何かに気がついた。

「あら、皆何も入っていない箱に集まって、何を話していたの?」

俊は目を見開いた。勇人と武人は、お互いの顔を見合っていた。

俊は言った。

「えっと~・・・・・この箱で、勇人君と武人君の三人で何か作ろうかな~と思って」

と、慌てて答えた。綾花は言った。

「あら~そうなの。お母さんおじゃまだったわね」

「ううん」

「じゃぁ、頑張ってね」

と言うと、部屋を出て行った。

シーン・・・・・・

暫く沈黙が続いた。この沈黙を破ったのは、勇人だった。

「なぁー白陽」

「なんだ?」

「何で俊兄のお母さんは、白陽達が見えなかったんだ?」

「・・・・・なるべく気にしないようにしていたんだが、本来妖怪は人間には見えないはずなんだ」

「え?」

シーン・・・・・

本日二度目の沈黙。俊は言った。

「それは本当なの?」

「あぁ」

「じゃぁ、どうして僕達三人には見えるんだろう?」

「それは俺にも分からない」

「う~ん・・・・・・」

すると、勇人が何か思いついた。

「俊兄」

「うん?」

「俺のじいちゃんが妖怪に詳しいから、聞いてみたら何か分かるかもしれません」

「なるほどね。確かに、勇人君のおじいちゃんは詳しいね」

「俺今日聞いてみます」

「分かった。何か分かったら教えてね」

「分かりました」

勇人の提案で話がまとまったので、勇人と武人は家に帰ることになった。

 

 

 夜、涼しい夜風が吹き、風鈴の音が響く中、勇人と武人は祖父修冶(しゅうじ)の部屋に来ていた。

「なぁ~じいちゃん」

「うん?何じゃ勇人」

「妖怪って、人には見えないって本当?」

「!?」

修冶は目を見開き、勇人の方に向いた。

「勇人、それは誰に聞いた?」

「えっと・・・・・」

勇人は少し考えてから話した。

「実は昨日の夜、俊兄と俺は三匹の妖狐を発見したんだ。それで今日武人と二人で俊兄の家に行って、会ったんだけど・・・・・・俺、武人、俊兄の三人しか見えていないみたいなんだ。妖狐に聞いたら、『人間には見えないはずなんだ』、て聞いたからどうなのかと思って・・・・・・・・」

武人は慌てて言った。

「兄ちゃん!言って良かったの?」

「大丈夫だ。じいちゃんは、口が堅い事は武人も知ってるだろ?」

「でも・・・・・」

武人が何か言いかけた時、修冶は口を開いた。

「・・・・それは本当か?」

コクン、と勇人は頷いた。修冶はフゥーと息を吐いた。

「それは、本当じゃ。じゃが、普通の人間だったらの話じゃ。」

「!?」

「え!?」

二人は目を見開いた。勇人は言った。

「普通の人間だったらって・・・・・・」

「・・・・二人には言ってなかったが、わしらの一族の一部の者は見えるのじゃよ・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

それから少し間を置いてから、修冶は話した。

「二人はこの村に伝わる、昔話は知っておるな?」

「あぁ」

「うん」

「その昔話は続きがあってな、数年経って突然行方不明だった青年は、村に帰って来たんじゃ。青年は他の人には見えない何かが見えるようになったのじゃ」

勇人は言った。

「まさか、妖怪が見えるようになったのか?」

「そうじゃ。青年はその事は、村人に隠していたようじゃがな。その後、青年は結婚し、一族は繁栄したそうじゃ」

武人は言った。

「もしかして、その人がご先祖様?」

「おぉ。察しがいいのう」

勇人は言った。

「何でじいちゃんは、その事を黙ってたんだ?」

「・・・・・・時が来れば話すつもりじゃった。だが、この事は俊以外にはしゃべるんじゃないぞ。よいな」

「あぁ」

「はーい」

二人はそう答えると、修冶の部屋を出た。

「・・・・・・そこにおるのは分かっておるぞ、夜光(やこう)」

すると、火の玉のような火が修冶の近くに来た。

ボー!!

火は大きくなり、中から妖狐が現れた。

「よっ!じいさん元気にしてっか?」

「何を言うとる!!わしはいつでもバリバリの現役じゃ!!」

「ちったぁー大人しくしてないと、体に来るぞー」

「フン!余計なお世話じゃい!!」

と、ごく普通の会話をしていた。すると、修冶は真剣な顔で言った。

「それはそうと夜光、お主が来たという事は、あやつも動き出したのか?」

「あぁ。近いうちに何かがおきるぜ」

「・・・・・・」

二人は何も起こらない事を祈りながら、月をしばらく見上げていた。

 

 

 三匹の妖狐が来てから、一週間が過ぎた。三人と三匹は友達になっていた。勇人と武人は俊に、祖父修冶が話た事を全て話していたが、今で通りに生活をしていた。その日の夜、勇人と武人は俊の家に泊まる事になった。

「兄ちゃん、お泊まり楽しいね」

「そうだな」

武人と勇人は、俊の部屋で寝ることになった。もちろんあの三匹も一緒だ。三人は昼の疲れが出たのか、すぐに眠りについた。

「・・・・・兄ちゃん・・・・・」

「・・・・・もっと遊ぶぞ・・・・・」

「・・・二人共、廊下は・・・・走っちゃダメだよ・・・・」

三人はいろいろ寝言を言っていた。三匹は、その光景を見て笑っていた。もちろん小声で。

「クスクス・・・・・」

「アホだろこいつら・・・・プッ・・・」

「あははははは・・・・・」

すると、

ボッ!!

「!?」

「!?」

「!?」

部屋の中から突然火が出てきた。白陽は言った。

「この火は、狐火!!」

ボー!!

三匹は慌てて箱の中に入った。すると、

「お~い、おめいら何慌てているんだ?」

「夜光様!?」

「夜光様!?」

「夜光様!?」

三匹は、勢いよく箱から顔を出した。白陽は言った。

「何で夜光様が、ここにいらっしゃるんですか?」

「何でって、おめいら三人を迎えに来たんだよ。あんまり長居は出来ないのは、知ってるだろ?」

「・・・・・・」

妖怪は本来、何か特別な事情が無い限り、人間界に行ってはいけない掟があるのだ。伍金は言った。

「でも・・・・・こんな別れ方はあんまりですよ・・・・」

黒奏も言った。

「それに・・・・・別れたら、僕達の事を忘れちゃうじゃないですか・・・・・・」

「・・・・・」

なぜ妖怪が人間界に行っては行けないのか、その理由はいろいろあるが、最大の理由は妖怪と関わった人間は、妖怪が離れた

時に妖怪の事を全て忘れてしまうのだ。

「う~ん・・・・・おまえらが嫌なのは分かる。だが心配はいらねぇ。この三人は、おまえらの事を決して忘れねぇ」

「!?」

「!?」

「!?」

三匹は目を見開いた。白陽は言った。

「どうしてですか?」

「・・・・・時が来れば分かるさ。さっ、安心したところで早く帰るぞ!夜が明けちまう」

気がつけば月は山に隠れかかり、反対に太陽が昇り始めていた。三匹は別れの言葉を、小声で言った。

「俺達を救ってくれてありがとうな。楽しかったよ」

「三人共オレらに会うまで、元気でいろよな!!」

「また一緒に遊ぼうね!!」

夜光は言った。

「おまえら、別れの挨拶は済んだか?」

コクン、と三匹は頷いた。

「よし、行くぜ」

夜光は手に巨大な狐火を出した。

ボー!!

三匹と夜光は狐火に包まれ、消えていった。

 

 

 秋も本番に入り、村にも秋がやって来た。村を囲む山々は色鮮やかになっていき、秋風が吹くと、桜吹雪のように紅葉が散っていった。村は観光客で賑わい、村人達は忙しなく動いていた。一方、勇人、武人、俊は稲荷神社に来ていた。

「・・・・・はぁー・・・・」

「兄ちゃん、これで今日三度目の溜め息だよ」

「だってよぉ、あの三匹が突然いなくなったんだぜ。心配じゃねぇのかよ」

「それは・・・・僕だって心配だよ・・・・」

二人のやり取りを見ていた俊は、勇人を慰めながら言った。

「まぁまぁ、そう落ち込まないで。勇人君が落ち込んでたら、また会った時に妖狐達が心配するよ」

「・・・・・」

武人は言った。

「そうだよ兄ちゃん!!きっとまた会えるよ!!」

「・・・・・そうだな」

そう言うと、勇人は立ち上がった。

「俊兄、武人、祭りの準備に行かないか?」

「うん!!行く行く!!」

「そうだね」

三人は祭りの準備の手伝いをするために、神社の広場にいた大人達の所へ向かった。空は、雲一つ無い秋空が広がっていた。

 

 

 二日後、いよいよ村の恒例行事“狐火(きつねび)祭り(まつり) ”が始まった。この狐火祭りとは、狐火に見立てた火を持ち、神社の裏にある狐山の祠の前にある巨大な蝋燭(ろうそく)に火を付ける。付けたらその蝋燭を持って、稲荷神社に持って来るのだ。一位になった人には、神社でお清めされた“狐石(きつねいし) ”と呼ばれる置物が貰える。この狐石は毎年人気で、この祭りに参加する人は年々増えている。

「・・・・満月、綺麗だなぁ~・・・・・」

「そうだね~兄ちゃん・・・・・・」

「本当に綺麗だね~・・・・・・」

三人は神社の前にある、階段に座っていた。この狐火祭りは、二十歳からでないと参加が出来ないのだ。つまり、事実上この三人は参加出来ないのだ。

「・・・・・勇人君、武人君、屋台に行こうか」

「賛成~」

「うん!!」

三人は屋台へと向かって行った。この時、狐山の異変に気付く者は誰もいなかった。

 

 

 満月が天高く昇った頃、村人達はなぜか慌てていた。勇人は言った。

「何か様子が変だ」

「何がー?」

「この時間だったら、もう誰かがゴールしているはず・・・・」

すると、

フューウー!!

突然強い風が神社の広場を包まれた。

「くっ!」

「うわ~!!」

「うっ・・・・」

風の影響で提灯の火が消え、広場は真っ暗になった。月は雲に隠れ、辺りは闇に支配された。

「何もみえねぇ・・・・・」

「兄ちゃん恐いよ~」

「武人君を真ん中にして、身を寄せ合おう」

フューウー!!

風は弱まるどころか、強さが増していった。村人達の影が一人、また一人と消えていった。

「俊兄!!このままじゃぁ俺達もヤバイですよ!!」

「だが・・・・この風じゃぁ身動きが出来ない・・・」

突然、後ろの方から黒い影が現れた。三人は黒い影に囲まれた。

「・・・・こいつらが例の者達か?」

「誰でもいい・・・全員捕らえろ!!」

シャー!!

「うわー!!」

「わー!!」

「くっ!!」

すると、

ボー!!

突如、巨大な炎が三人を包みこんだ。

「これは狐火!!」

「くっ、撤退しろ!!巻き込まれるぞ!!」

シャー・・・・・

黒い影達は逃げていった。勇人は言った。

「何だ?この炎は?」

「すごーい」

「・・・・うん?上に誰かがいる」

勇人と武人は上を向いた。上には三人の子供が空中を舞っていた。

「なっ・・・」

「え~!?」

すると、

ボー!!

炎はさらに勢いを増し、三人は炎に飲み込まれた。

「うわ・・・・・」

「うわー・・・・」

「うわ・・・・・」

三人は時空に飲まれ、そのまま意識を失った。

 

続く

 

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