妖狐の約束は月の光と共に その1

高校生の時に描いた長編小説。

主人公の棚田勇人(たなだゆうと)は平和に暮らす人間界から

妖怪たちの世界も巻き込む異世界ファンタジーです。

*当時のペンネーム「白桜」のままで描いています

A5版全19ページ↓

妖狐(ようこ)の約束は月の光と共に

白桜(しろざくら)     

 

昔ある村に、一人の青年がいました。青年は村一番の働き者でそして、動物が大好きでした。青年はよく山に出かけては傷ついた動物や、親を無くした幼い動物達を、家に連れて帰ったりしていました。こうして毎日楽しい日々を送っていた青年は、突然姿を消してしまったのです。村人達は必死になって青年を捜しました。しかし、青年は発見されませんでした。村人の話によると、青年が姿を消す数日前に、山で不思議な動物を拾って、家に連れて帰って来たんだとか・・・・・・ 

 

これは大きな出来事の前触れ。本当の物語はここから。さぁ、物語のはじまり、はじまり。

 

***

 

ここは現代と昔が交錯した町、京都。秋の季節を迎え、町は紅葉で華やかに演出されていた。そんな中、町から少し離れた村があった。この村は昔“第二の京都 ”と言われるほど有名な場所だった。今は、その昔の町並みを完全に残した、知る人ぞ知る密かな観光スポットになっていた。そして、ここには日本一大きな稲荷神社があった。この神社の近くに、古い家があった。

その家の縁側で、一人の少年が何も掛けずに昼寝をしていた。

「zzzzzzzzzz・・・・・・」

秋風が吹く中、気持ち良さそうに寝ている少年名は、棚田(たなだ)勇人(ゆうと)。この物語の主人公だ。中学二年生で、運動が得意。前髪を少し長く伸ばしている。

「う~ん。もう、食べれねぇ・・・・・」

どんな夢を見ているんだか。秋風が、勇人の髪を靡(なび)かせている中・・・・・

ドタドタドタ・・・・・

誰かが、もの凄い勢いで接近して来た。

ドタドタドタドタキキーーーーーッ!!!

衝突するギリギリのところで、人物は止まった。

その人物は右手に虫取り網を持ち、肩に虫籠(むしかご)を掛けた少年だった。すると、少年は虫取り網を両手に持ち、勇人に勢い良く振った。

バサ!!

「!?」

勇人は間一髪のところで、網を躱(かわ)した。網を持っていた少年は言った。

「おっしいーーーー!!あともう少しだったのに」

と、とても残念がっていた。勇人は、少し荒い声で言った。

「何するんだ、武人(たけと)!!」

網を持っていた少年の名前は、棚田(たなだ)武人(たけと)。小学四年生で、やんちゃだ。大きな目で、頭のてっぺんの髪が跳ねている。勇人の弟でもある。

「エヘヘ。この前の、アイスの仕返し」

武人は笑顔で答えた。

「てめ~~、覚悟しろ!!!!」

「うわぁ~~!!」

勇人と武人のおにごっこが始まった。その後、家に帰って来た父、悠也(ゆうや)の怒りの雷によって強制終了となった。

 

* 

 

 夜、夜風が吹き、鈴虫達が綺麗な音色を奏でる中、勇人達は、花火をするために庭に出ていた。悠也がロウソクに火を付け、花火の準備をしている中・・・・・

「ああ!!武人!!その花火は、俺がするんだ!!」

「い~や~だ~!!僕がするんだ~!!」

二人が取り合っていた物は、ロケット花火だった。男の子なら、花火の中で一番やってみたい花火だ。

「これは、俺がするんだ!!」

「い~や~だ~~~!!」

二人は、火花を散らしていた。

「・・・・・ハァーー」

悠也は、大きな溜め息をした。溜め息をした後、勇人と武人の所に歩き出した。

ガバ!!

「!?」

「!?」

悠也は、二人からロケット花火を取り上げた。父は言った。

「勇人、武人、喧嘩をするんなら、ロケット花火はお父さんがやるぞ」

「ごめんなさい」

「ごめんなさい」

二人は、直ぐに謝った。それから少し時間が経ってから、勇人は言った。

「・・・・武人、二人でロケット花火やるか?」

「うん!!一緒にやろう!!」

二人は、ロケット花火をセットした。

「武人、準備はいいか?」

「うん!!」

二人は、ロケット花火の導火線を持った。

「せーの!」

「せーの!」

二人はタイミングを合わせて、ロケット花火の導火線に火を付けた。

バチバチバチ・・・・・

火花を散らしながら、火は順調に進んでいった。

バチバチバチ・・・ヒュ~~ン!!パパン、パンパン・・・

「うわぁ~~~」

「すっげぇ~~~」

二人は、初のロケット花火に大満足のようだった。そんな二人の様子を悠也は、いつもとは違う優しい顔で見つめていた事に二人は、気付いていなかった。

 

 

 楽しい時間はあっという間に過ぎ、鈴虫達の音色だけになった。空には雲が無く、金色に輝く満月が夜空を照らしていた。

弟の武人はスヤスヤと気持ち良く寝ていたが、兄の勇人はなかなか寝付けずに、布団の上でゴロゴロしていた。

(う~ん、・・・・・眠れない)

勇人は布団から起き上がり、窓を開けようとした。すると、

「!?」

勇人が見た物とは、勇人の祖父が神主を務めていた、稲荷神社の方からだった。何か光っているようだ。勇人は髪を手で、クシャクシャッと掻いた。

「・・・・・行ってみるか」

勇人は光の正体を確かめるべく、神社へ向かった。

 

 

 一歩外に出ればまるで、夜の闇が世界を支配しているようだった。その世界をわずかながら、月の光が照らしていた。そんな中、一筋のライトの光が道を照らしていた。

タッタッタッタッ・・・・タッ!

「はぁ・・・・はぁ・・・・やっと着いた」

勇人は、神社に続く階段の前に着いた。

「う~~ん・・・・・何も光ってないなぁ・・・・・」

おかしいな~~~なんて思いながら、髪を手でクシャクシャッとしていた。すると、

タッタッタッタッ・・・・

「!?」

勇人の来た方向から、誰かが向かって来ていた。

タッタッタッタッ・・・・

どんどん近づいて来ていた。勇人は、柔道の構えをした。実は勇人はこれでも、柔道二段を持っている。そして・・・

ガバ!!

(よし!!捕まえた!!)

勇人は、そのまま技を掛けようとした。しかし、

「なっ・・・・・」

気づいた頃には、勇人の体は宙に浮いていた。逆に相手に技を、掛けられてしまったのだ。

ドスン!!

勇人は、地面に横になっていた。すると、

「酷いなぁ~勇人君、僕に技を掛けようとするなんて」

「!?俊兄(しゅんにい)!?」

勇人の技を返した青年の名は、早瀬(はやせ)俊(しゅん)。高校二年で、成績はいつもトップだ。髪は長く、細い目をしている。勇人の従兄弟(いとこ)であり、勇人が尊敬している人だ。柔道は四段を持っている。

「にしても勇人君、どうしてここにいるの?」

「うっ・・・・・」

勇人は怒られるのを承知で、理由を話した。

「いやぁ~そのですね、窓を開けようとしたら、何か光っていたから正体を知りたくなって、つい来ちゃったんです・・・・」

すると、

「えっ!勇人君も見たの!?」

「えっ!俊兄もですか!?」

シ~ン

二人の間に沈黙が流れた。俊は言った。

「取り敢えず、二人で行こうか」

「はっ、はい!」

二人は月の光に照らされた、階段を上って行った。

 

 

 階段を登りきると、広い広場が広がっていた。そして奥には、日本一大きい稲荷神社が堂々と建っていた。二人は、光が見えた神社の裏にある“狐山(きつねやま) ”にいた。

「俊兄、見つけましたか?」

「いいや。見つかってないよ。勇人君は?」

「いいえ」

二人が探し始めてから、かれこれ二時間は経過していた。

俊は言った。

「う~ん。見間違いだったのかなぁ~・・・・」

俊は辺りを見渡した。すると、

「あっ!」

そう言うと、突然走り出した。勇人も、後から続いて走り出した。

「どうしたんですか?急に走り出して・・・・・」

「勇人君、祠の下を覗いてごらん」

勇人は俊に言われた通りに、祠の下を覗いた。

「あっ!」

祠の下には、何かが光り輝いていた。勇人は言った。

「・・・・・これは・・・・・狐?」

「・・・・・多分・・・・・・」

祠の下には、怪我をした三匹の子狐がいた。勇人は言った。

「でも、尻尾の数が多いような・・・・」

「う~ん、確かにそうだね」

二人は三匹の子狐を観察していると、真ん中にいる子狐が二人の方に顔を向けた。

ウウウウウ・・・・

どうやら、二人を威嚇(いかく)しているようだ。勇人は言った。

「・・・・・どうします?この子狐達」

「う~ん・・・・・連れて帰ろうか」

「え?」

そう言うと、俊は手を祠の下にいれた。

ウウウウウ!!

子狐は歯をむき出しにして、毛を逆立てた。

「俊兄!?危ないですよ!?」

勇人は、必至になって止めようとした。しかし、俊はそれを無視し、三匹の中で黒い子狐を掴んだ瞬間、

シャーーーーーー!!

威嚇していた子狐が、子狐を掴んでいた手に噛みついた。

「うっ・・・・」

「俊兄!?」

だが、俊は腕の痛みに耐えながらこう言った。

「僕は、君達を助けたいんだ。君の兄弟?かな、君が大事思っ 

ているのは分かる・・・・・一回でいい、僕を信じてくれない

か?」

と、腕に噛みついている子狐に言った。すると、

ウウウウウ・・・・・」

俊の気持ちが伝わったのか、子狐は噛みつくのを止めた。

「ク~ン」

と鳴くと、噛みついていた俊の腕を舐めた。

 

その後、三匹の子狐は取り敢えず、俊の家で保護する事になった。威嚇していた子狐は、安心したのか俊の腕の中で寝ていた。

俊は言った。

「ふぅ~。何とか祠の下から出せたね」

「俊兄?」

「うん?何だい?」

「どうして俊兄は、この子狐と心が通じたんですか?」

「う~ん・・・・やっぱり、素直な気持ちを伝えたからじゃな

いかな?この子達も僕らと同じ、心を持っているからね。だから通じたんじゃないかな?」

「・・・・・・」

「勇人君?」

「・・・・・やっぱり、俊兄はすごいや」

「え?」

勇人は、家に向かって走り出した。

「?」

そんな勇人の行動に疑問を持ちながらも、俊は勇人の後を追った。

 

 

 太陽がちょうど天高く上った頃、爽やかな風が吹いていた。太陽の光に照らされた村は、まさに平安時代の京都そのものだった。その頃、勇人は子狐建ちの様子を見るために、俊の家へ向かっていた。

「・・・・・・」

(おかしい。誰かが俺の後を付けている)

タッタッタッタッ・・・・・バッ!!

勇人は後ろを振り返った。

「!?」

勇人が見た者の正体は・・・・・・

「武人!?何で付いて来たんだ!?」

「だって・・・・・」

「?」

武人は少し間を置いてから、勇人に言った。

「昨日外に出てから、何だかソワソワしてたから付いて来た」

「・・・・見てたのか?」

「・・・・うん」

ヒューン・・・・・

二人の間に風が吹いた。勇人は、少し間を置いてから言った。

「・・・・・なぁ、武人」

「うん?なあに?」

「いいか、俺は今俊兄の家に向かってる。俊兄の家で見た物については、誰にも話さないて約束出来るか?」

すると、沈んだ顔をしていた武人の顔が、明るくなった。

「うん!!約束する!!」

「よし!行くか!!」

「うん!!」

二人は手を繋ぎながら、俊の家に向かった。

 

 

 勇人の家から少し離れた所に、俊の家があった。勇人の家も大きいが、俊の家も村では結構歴史のある大きな家だ。二人は

俊の家の玄関の前にいた。

ピーンポーン

勇人はインターホンを押した。

タッタッタッタッ・・・・ガラガラ!

「やぁ、勇人君・・・・・」

「こんにちは。俊兄」

「・・・勇人君?何で武人君がいるのかな?」

「・・・・昨日俺が、家を出るのを見てたみたいなんです」

「・・・・・」

すると、武人が慌てて言った。

「俊兄、兄ちゃんは悪くないよ!!僕が無理して行きたい、て言ったんだよ!!怒るなら、僕を怒って!!」

「武人・・・・・」

俊は、ハァーと息を吐いた。

「大丈夫だよ、武人君。僕は怒ったりしないから。でも、この事は誰にも言っちゃだめだよ?」

「うん!!」

「じゃぁ、二人共付いておいで」

二人は「おじゃまします」と言ってから、俊に付いて行った。

 

 勇人と武人は、二階にある俊の部屋に着いた。

「うわ~」

「すっげ~~」

実は二人は俊の部屋に入るのは、今回が初めてなのだ。部屋は広い和室で、掃除がされていた。本棚には、最新の本から古い本まで揃っていた。すると、俊は押し入れから箱を出した。中には、昨日発見された三匹子狐が入っていた。武人は言った。

「うわぁ~~~兄ちゃんこれ狐?」

「う~ん、多分な」

勇人は子狐を観察した。普通の狐は尻尾の数が一本なのに、この子狐達の内二匹は三、四本持っている。毛の色は黒、金、白とこれまた珍しい色をしている。勇人は俊に聞いてみた。

「俊兄、これ本当に狐なの?」

「・・・・・・」

「俊兄?」

俊は無言で立ち上がって、部屋を出た。

「?」

「?」

勇人と武人は、取り敢えず待つ事にした。

 

 数分後。俊は古い本を持って戻って来た。勇人と武人は、俊が持って来た本のタイトルを見た。

「妖怪説話集?」

「ようかいせつわしゅう?」

俊の話によるとこの“妖怪説話集 ”は、日本全土の妖怪に関する説話を集めた古い本らしい。俊は言った。

「確かここら辺に・・・・・あった、あった。二人共この絵を見てごらん」

二人は俊が開いたページの絵を見た。勇人は言った。

「あっ!そっくりだ!」

「うん!似てる!」

勇人は聞いてみた。

「俊兄、この絵は何ですか?」

「あぁ、これは“妖狐 ”て言う妖怪なんだ」

「妖怪!?」

勇人は俊から本を受け取り、そのページを読んでみた。

 

妖狐とは狐の妖怪のことである。人間や他の動物に変身し、人を化かしたりする。まれに助けてくれた人間に恩返しをしたりする。―Wikipediaより

 

この妖怪説話集によると、妖狐には種類があるらしい。手前にいる子狐から見てみると、毛の色は黒く、尾の数は一本。“黒狐(こくこ) ”と判明した。真ん中に座っている子狐は、毛の色は白く、尾の数は四本。“白狐(びゃっこ) ”と判明した。一番奥にいる子狐は、毛の色は金で、尾の数は三本。“金狐(きんこ) ”と判明した。

「へぇ~妖狐にもこんなに種類がいるんですね」

「うん。この三匹は仲が良いから、兄弟だと思うんだ」

「でも、どうして祠の下?しかも三匹も」

「う~ん、どうしてだろうね~。三匹ともケガをしていたし・・・・・」

俊と勇人が考え事をしている中、武人は三匹の妖狐に夢中になっていた。武人は祖父から教えてもらった事が、本当なのか試してみた。

「僕は棚田武人!よろしくね!」

すると、

「・・・・白陽(はくよう)、それが俺の名前だ」

「しゃべれるの!?」

「あぁ」

「すっご~い!!白陽かぁ~かっこいいなぁ~」

「俺は武人も、なかなか良い名前だと思う」

「本当!?ありがとう!!」

勇人は武人のやり取りが、おかしい事に気がついた。

「お~い武人、誰と話してんだ?」

すると、武人は笑顔で答えた。

「白陽とだよ!!」

「白陽?」

「白陽は俺の事だ」

「へ?」

勇人は声のした方へ向いた。

「・・・・・・武人、こいつがしゃべったのか?」

「こいつじゃなくて、白陽だよ!!」

シーン・・・・・

嘘だろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ・・・・・・

勇人の声は外にまで響いていた。

 

 

 三人は、三匹の妖狐と自己紹介をしていた。まずは白狐から、紹介を始めた。

「俺の名前は白陽。長男だ」

次は金狐が紹介した。

「オレの名前は伍金(ごこん)で次男。よろしくな!!」

最後に黒狐が紹介した。

 

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